01結論(判断の軸)
EC特化とBtoB特化は、どちらが優れているかではなく、求められるスキルと評価のされ方が異なる2つの専門性です。ECは売上や広告費用対効果など、数字の変化が短いサイクルで見えやすい領域です。BtoBはリード獲得から商談・受注までの期間が長く、成果を示すまでに時間がかかる領域です。
この記事では、案件の特徴・求められるスキル・単価の傾向という3つの軸で、EC特化とBtoB特化の違いを整理します。施策の具体的なやり方ではなく、専門性を選ぶ判断材料として使ってください。
この選択は一度決めたら変更できないものではありません。実務経験を積む中で、EC特化からBtoB特化へ、あるいはその逆へ軸足を移す人もいます。まずは自分の得意そうな領域から選んでも構いません。
進路の選び方全体は『Webマーケターになる3つの進路、副業・転職・独立をどう選ぶか』で扱っています。ここではその前提として、職種の中でもどの領域に特化するかという選択を扱います。
02比較対象の整理(表)
EC特化とBtoB特化を、案件の特徴・求められるスキル・単価の傾向・将来伸びやすいスキルという4つの軸で整理しました。
| 軸 | EC特化 | BtoB特化 |
|---|---|---|
| 案件の特徴 | 売上・広告費用対効果など短期で数字が動く | リード獲得から受注まで期間が長い |
| 求められるスキル | 広告運用・LPO(ランディングページ最適化)・在庫や季節性を踏まえた計画力 | コンテンツ設計・リード育成・営業部門との連携力 |
| 単価の傾向 | 繁忙期・セール施策など短期成果に応じた単価設定が多い | 契約期間が長く、継続契約による単価の積み上げが多い |
| 将来伸びやすいスキル | 運用型広告・データ分析 | コンテンツ設計・部門間連携 |
この表はあくまで傾向であり、すべての案件がこの通りに分かれるわけではありません。EC事業者向けにBtoB的な提案が必要になる場面や、BtoB企業がECサイトを持つ場面もあり、実際の案件では両方の視点が求められることもあります。
クライアントへの説明の仕方にも違いがあります。EC案件では売上や広告費用対効果の推移をグラフで示す説明が中心になりやすくなります。一方、BtoB案件ではリードの質や商談化率など、数字だけでは伝わりにくい要素を言葉で補う説明が求められやすくなります。
自社の転職支援データでは、事業会社(インハウス)への内定者に、建築系マーケ会社や不動産会社マーケ担当、製造業マッチングサイト、SaaS企業などの実例があります。対象は2024年〜2025年に報告があった卒業生で、卒業生全体を網羅した集計ではありません(出典: WEBMARKS社内実績データ)。この内訳を見る限り、BtoB色の強い業種での内定実績は複数確認できます。一方、EC事業者単体の内定事例は、公開されている集計の中では確認できませんでした。
03判断基準①求められる数字の種類で選ぶ
ECは、売上・コンバージョン率・広告費用対効果など、比較的短いサイクルで結果が数字に表れます。BtoBは、リード数から商談化率、受注率まで複数の指標を追いかける必要があり、1つの案件で成果が見えるまでの期間が長くなる傾向があります。
数字をすぐに動かして評価されたい人はEC領域、複数の指標を長期で追いかけて評価されたい人はBtoB領域が向いていると言えます。ただし、この傾向はあくまで一般的な違いであり、案件ごとの個別事情によって変わります。
04判断基準②関わる人数・調整範囲で選ぶ
ECは、広告代理店やクリエイティブ制作者など、比較的少人数のチームで完結する案件が多くなります。BtoBは、営業部門やインサイドセールス、カスタマーサクセスなど、複数の部門と連携しながら施策を進める場面が増えます。
自分の得意な働き方に応じて選ぶことができます。少人数で素早く動く働き方が得意な人はEC、複数部門と調整しながら中長期の施策を進める働き方が得意な人はBtoBに向いている場合があります。
05判断基準③これまでの経験を活かせるかで選ぶ
前職の経験がある場合、その経験を活かせる領域を選ぶという考え方もあります。小売・アパレル・美容などの業界経験がある人はEC、法人営業や商材知識のある業界の出身者はBtoBの案件で経験を活かしやすい傾向があります。
未経験からWebマーケターを目指す場合は、前職の経験にとらわれず、案件の獲得しやすさや自分の興味で選んでも構いません。職種そのものの向き不向きの見極め方は『SEO・広告・コンテンツ、Webマーケター職種別の向き不向きの見極め方』で扱っています。
06判断基準④将来のキャリアの広がりで選ぶ
EC特化で実務経験を積むと、運用型広告やデータ分析など、成果が数字で見えやすい領域のスキルが伸びやすくなります。BtoB特化で実務経験を積むと、コンテンツ設計から商談化までの一連の流れを見る視点や、営業部門との連携経験が伸びやすくなります。
どちらの経験も、独立後の案件獲得や、事業会社でのマーケティング責任者的なポジションを目指す際の土台になります。将来どちらの方向に進みたいかを、専門性を選ぶ際の判断材料の一つに加えてもよいでしょう。
07ケース別のおすすめ
4つの判断基準を踏まえ、状況別の考え方を整理します。
- 短いサイクルで成果を出して評価されたい人は、EC特化から経験を積むのがおすすめです
- 複数部門との調整を厭わず、中長期の関係構築が得意な人は、BtoB特化が向いています
- 小売・アパレル・美容業界での勤務経験がある人は、その経験を活かしやすいEC特化を検討する余地があります
- 法人営業や特定業界の商材知識がある人は、その知識を活かしやすいBtoB特化を検討する余地があります
- 将来的に独立や事業責任者を目指す場合は、判断基準④で触れた将来伸びやすいスキルの違いも参考にしてください
- 案件の母数を早く増やしたい副業初期の段階では、求人・案件の数が多い領域を優先する考え方もあります
- どちらか決めきれない場合は、最初の案件でどちらも経験し、手応えのあった方に寄せていく進め方もあります
EC特化・BtoB特化のどちらを選んでも、単価の水準は経験や実績によって変わります。単価相場の実額データは『Webマーケターの単価相場、副業とフリーランスの実額データ』で扱っています。
08FAQ
EC特化とBtoB特化、どちらが単価は高いですか
一律にどちらが高いとは言えません。ECは短期施策の単価設定、BtoBは継続契約による単価の積み上げという、単価の作られ方自体が異なります。
未経験からでもEC特化・BtoB特化を選べますか
選べます。ただし未経験の段階では、案件の獲得しやすさも判断材料になります。まずは経験を積める案件から始め、実務を通じて自分に合う領域を見極める進め方も現実的です。
EC特化とBtoB特化、両方の経験を積むことはできますか
可能です。特に案件数が少ない副業の初期段階では、両方の案件を経験しながら自分の得意な領域を見極める人も少なくありません。
業界経験がまったくない場合、どう選べばいいですか
業界経験がない場合は、案件の獲得しやすさや、自分がどちらの働き方に興味を持てるかで選んでも構いません。判断基準③で触れた経験の有無は、あくまで選び方の一つの視点です。
EC特化からBtoB特化へ、あるいはその逆へ転向することはできますか
転向は可能です。求められるスキルの一部が異なるため、転向時には新しい領域の実務理解を改めて示す必要がありますが、Webマーケティングの基礎的な考え方は共通して活かせます。
EC特化・BtoB特化以外の領域を選ぶこともできますか
できます。この記事では代表的な2つの専門性を取り上げていますが、Webマーケターの職種全体の地図は『SEO・広告・コンテンツの役割分担、Webマーケターの職種地図』で扱っています。
EC特化とBtoB特化という分け方は、SEOや広告といったスキル軸の分け方とどう違いますか
SEOや広告は施策の手法の分類です。EC特化・BtoB特化は、その手法をどの業界・商材に対して使うかという分類であり、両者は組み合わせて考えるものです。
事業会社(インハウス)と代理店、どちらがEC・BtoB特化を選びやすいですか
どちらの雇用形態でもEC・BtoB双方の求人があります。インハウスは特定の業界に属する分、専門性が深まりやすく、代理店は複数の業界の案件に関わる分、比較の視点が身につきやすい傾向があります。