01結論(判断の軸)
副業Webマーケターが実績をSNSで公開するかどうかは、2つの軸で判断します。ひとつはクライアントから公開の許諾を得ているかどうかです。もうひとつは、公開する情報がどこまで具体的かです。
原則は、実績を公開する前にクライアントへ許諾を取ることです。許諾なしに具体的な数値やクライアント名を公開すると、業務委託契約の守秘義務に抵触する場合があります。
許諾が得られない、または確認が難しい場合もあります。その場合は、公開できる情報の範囲を自分で絞り込む必要があります。この記事では、許諾の取り方と、許諾が無いときに書ける範囲の両方を整理します。
副業を始める全体の流れは『Webマーケター副業、初案件を獲得するまでの実務ロードマップ』で扱っています。SNSでの実績公開は、案件を継続して受けていく段階で関わってくるテーマです。
02比較対象の整理(表)
SNSでの実績公開は、大きく4つのパターンに分かれます。パターンごとに、必要な許諾と主なリスクを整理しました。
| 公開レベル | 内容 | 許諾の要否 | 主なリスク |
|---|---|---|---|
| クライアント名+具体的な数値 | 社名や商品名、具体的な成果数値をそのまま公開 | 必須 | 守秘義務違反・信頼関係の毀損 |
| 業種+抽象化した成果 | 「ECサイト」「BtoB企業」のような業種と、丸めた成果表現 | 確認が望ましい | 業種と時期の組み合わせで特定されるおそれ |
| 実績件数・スキルのみ | クライアント情報を含めず、対応した施策の種類や件数のみ | 原則不要 | 具体性が低く説得力に欠ける |
| 非公開 | SNSでの実績公開自体を行わない | 不要 | 案件獲得の材料として使えない |
一番安全なのは非公開ですが、案件獲得の材料としては弱くなります。逆に、クライアント名や具体的な数値まで公開すると説得力は増しますが、許諾なしでは踏み込みすぎたリスクを抱えます。
多くの副業Webマーケターにとって現実的な落としどころは、2段目の「業種+抽象化した成果」です。ただしこの場合も、可能な範囲でクライアントに一声かけておくことをおすすめします。
03判断基準①契約書・業務委託契約に守秘義務条項があるかを確認する
実績を公開する前に、まず契約書や業務委託契約書を確認してください。多くの契約書には、秘密保持に関する条項が含まれています。
条項の範囲は契約ごとに異なります。「クライアント名の公表を禁止する」と明記している契約もあれば、「業務上知り得た情報全般」を対象にする、より広い条項もあります。
契約書が無い、または口頭でのやり取りだけで進んでいる案件もあります。その場合も、公開してよいかどうかを別途確認する姿勢が必要です。契約書の有無にかかわらず、確認を省略しないでください。
04判断基準②許諾を取るときは、誰に何を確認するかを具体的にする
許諾を取る際は、「SNSで発信してもいいですか」という曖昧な聞き方より、具体的に確認する方が後のトラブルを避けられます。
確認する項目は主に3つです。クライアント名や商品名を出してよいか、具体的な数値を出してよいか、投稿する時期に制限はあるか、の3点です。
口頭でのやり取りだけで済ませず、メールやチャットなど文字で残る形で確認しておくことをおすすめします。許諾内容を後から見返せる状態にしておくと、双方の認識のズレを防げます。
05判断基準③許諾が得られない場合、何を書けるかを考える
許諾が得られない、あるいは確認自体が難しい場合もあります。その場合でも、実績をまったく発信できないわけではありません。
書ける範囲としては、クライアント名や特定できる情報を出さずに、対応した施策の種類(SEO記事の執筆、広告運用の設計など)や、担当した業務の範囲を伝える方法があります。数値を出す場合も、具体的な金額ではなく「改善が見られた」という表現にとどめる選択肢があります。
実績を語る際にクライアント名を明記せず、業種や案件の種類で抽象化して紹介する書き方は、守秘義務を守りながら実績を伝える現実的な選択肢の一つです。
一方で、業種と時期を組み合わせて書くと、狭い業界では特定される可能性が残ります。抽象化したつもりでも、投稿のタイミングや文脈から推測されるケースがある点には注意してください。無断で公開してよい抜け道は存在しません。判断に迷う場合は、公開を見送るという選択肢を優先してください。
06判断基準④SNS以外の発信物にも同じ判断が必要だと理解する
守秘義務に関わる判断が必要なのは、SNSの投稿だけではありません。ポートフォリオサイトや職務経歴書、案件への提案文でも、同じ確認が必要です。
転職を見据えてポートフォリオを作る場合の実績の見せ方は『施策の根拠をどう見せるか、Webマーケター転職のポートフォリオ術』で扱っています。SNS投稿とポートフォリオでは目的も読み手も異なりますが、守秘義務の考え方そのものは共通しています。
案件を受ける際の契約書やツールの整え方は『副業Webマーケターが最初に整えるべき環境、契約書とツールの最低限』で扱っています。最初の環境整備の段階で、守秘義務に関する条項の存在を意識しておくと、後から実績を公開する場面で迷いにくくなります。
07ケース別のおすすめ
判断基準を踏まえ、状況別の考え方を整理します。
- 許諾が得られた場合は、確認した範囲内で具体的な実績を公開してかまいません。範囲を超えないよう、許諾内容の記録を都度見返してください。
- 許諾を取る手段が無い、または相手と連絡が取りづらい場合は、業種や施策の種類にとどめ、数値は丸めるか省いてください。
- 契約書に明確な守秘義務条項がある場合は、条項の範囲を最優先で守ってください。SNSでの発信より契約が上位に来ます。
- 就業規則で副業そのものの扱いが未確認の場合は、先に『就業規則で副業はどこまで認められるか、Webマーケターの確認手順』を確認してください。
- 判断に迷う案件については無理に公開せず、次の案件の実績が固まってから発信するという選択肢もあります。
どのケースでも共通するのは、迷ったときは公開しない方向に倒すという姿勢です。実績公開は案件獲得の一つの手段にすぎず、それ自体を目的化しないよう注意してください。
08FAQ
実績を公開しないと案件は獲得できませんか
実績の公開は案件獲得の手段の一つですが、必須ではありません。提案文で具体的な進め方を示す、紹介や既存クライアントからの継続案件を増やすなど、公開以外の方法で案件につなげている副業Webマーケターもいます。
クライアントに実績公開を断られたら、どうすればいいですか
断られた場合は、その案件についての具体的な公開はあきらめてください。業種や施策の種類など、特定されない範囲での発信にとどめるか、別の案件の実績を優先して発信する方法があります。
昔の案件なら、時間が経てば公開してもいいですか
時間が経過したことが、守秘義務を解除する理由になるとは限りません。契約書に公開の期限に関する定めがない限り、時間の経過だけを根拠に公開の判断をしないでください。
数値をぼかせば、許諾なしで公開しても問題ないですか
数値をぼかしても、クライアント名や業種、時期の組み合わせから特定される可能性は残ります。許諾が無い状態での公開は、常にリスクが残る前提で判断してください。
SNSのDMやコメント欄で個別に実績を聞かれたら、答えていいですか
公開投稿でなくても、個別のやり取りで具体的な情報を伝える行為は、公開と同様のリスクを伴います。許諾の範囲内かどうかを同じ基準で確認してください。
契約が終了した後なら、自由に公開できますか
契約終了後も、守秘義務条項が一定期間存続すると定めている契約は珍しくありません。契約終了後の扱いについても、契約書の該当条項を確認してください。
フリーランスのポートフォリオサイトも同じ基準で考えるべきですか
はい。掲載先がSNSかポートフォリオサイトかにかかわらず、公開する情報の具体性と許諾の有無という判断基準は共通しています。
匿名アカウントでの発信なら、実名でのSNS発信より自由度は高いですか
アカウントが匿名であっても、投稿内容からクライアントが特定されるリスクは変わりません。匿名であることを理由に、許諾の確認を省略しないでください。
実績を公開せずに信頼してもらう方法はありますか
具体的な実績を出せない場合でも、提案時の進め方の説明や、想定するスケジュールの明確さで信頼を得ている副業Webマーケターもいます。実績の公開以外にも、信頼を得る手段は複数あります。
この記事の内容は、正社員やフリーランスにも当てはまりますか
守秘義務の考え方自体は、雇用形態にかかわらず共通する部分が多くあります。ただし、契約内容や適用される規定は個別に異なるため、自分の契約書を確認することをおすすめします。