01この記事でできるようになること
この記事を読むと、副業Webマーケターが案件を受ける前に、本業の情報漏洩リスクをどう見極めるかが分かります。あわせて、契約書で確認すべき点と、リスクが高い案件を避けるための具体的な手順も整理できます。
情報漏洩に関わる判断は、勤務先の就業規則や雇用契約の内容によって大きく変わります。この記事では一般的な確認の考え方を示すにとどめ、個別の判断は勤務先の担当部署や弁護士・社会保険労務士などの専門家にゆだねます。
02前提(対象読者・必要な準備)
対象読者は、副業でWebマーケターとして案件を受け始めた、またはこれから受けようとしている会社員です。前提として、勤務先の就業規則で副業が認められている、または認められる見込みがあることを確認しておいてください。就業規則の確認手順は『就業規則で副業はどこまで認められるか、Webマーケターの確認手順』で扱っています。
準備するものは3つです。自分の雇用契約書、入社時に取り交わした誓約書や秘密保持に関する書類、そして就業規則の副業・兼業に関する条項です。手元に無い場合は、人事担当部署に問い合わせて確認してください。
副業案件を獲得するまでの全体の流れは『Webマーケター副業、初案件を獲得するまでの実務ロードマップ』で扱っています。情報漏洩リスクの確認は、案件の入口選びと並行して進めるべき手順です。
03手順1|雇用契約書・秘密保持に関する書類の内容を確認する
最初に確認すべきは、自分が勤務先とどのような契約を結んでいるかです。雇用契約書や入社時の誓約書に、秘密保持義務に関する条項が含まれている場合があります。
秘密保持義務の対象範囲は、会社によって書き方が異なります。「業務上知り得た情報全般」という広い書き方をしている契約もあれば、「顧客情報」「技術情報」など対象を限定している契約もあります。
条項が長く分かりにくい場合は、人事担当部署に直接確認する方法もあります。自己判断で「たぶん大丈夫」と進めるより、確認したうえで動く方が、後のトラブルを避けやすくなります。
04手順2|競業避止義務の有無と対象範囲を確認する
秘密保持義務とあわせて確認したいのが、競業避止義務です。競業避止義務とは、勤務先と競合する事業を行うことを制限する取り決めを指します。
副業・兼業に関する国の考え方は、厚生労働省が公式サイトでガイドラインを公開しています(厚生労働省)。ただし、競業避止義務の具体的な対象範囲は、会社ごとの契約や就業規則によって異なります。
競業避止義務が定められている場合、勤務先と同業種・類似業種の案件を副業として受けることが制限される可能性があります。対象がどこまでの範囲かは、契約書や就業規則の記載を確認するか、人事担当部署に確認してください。
競業避止義務の条項が見当たらない場合でも、勤務先の事業と直接競合する案件は慎重に扱うことをおすすめします。条項の有無にかかわらず、信用を損なう行為として問題視される可能性があるためです。
05手順3|案件内容が本業の顧客・取引先と重ならないかを確認する
案件に応募する前に、その案件のクライアントが、勤務先の顧客や取引先と重なっていないかを確認してください。特に注意が必要なのは、勤務先の直接の取引先から副業の依頼を受けるケースです。
勤務先と直接の取引がない業界の案件を選ぶことは、情報漏洩リスクを避けるための基本的な考え方の一つです。
同業種の案件であっても、対象企業が勤務先と直接の関わりを持たない場合は、リスクの度合いが変わります。ただし、業界が狭い場合は、間接的なつながりが後から判明することもあります。案件の概要を確認する段階で、クライアント名や事業内容をできる範囲で調べておくと安心です。
判断に迷う場合、あるいは重なりの有無がはっきりしない場合は、その案件を見送るという選択肢も持っておいてください。無理に受けて後から問題が発覚するより、最初の時点で慎重に判断する方が、結果的に自分を守ることにつながります。
06手順4|案件で扱う情報の範囲を契約前に確認する
案件によっては、クライアントの内部データや顧客リストなど、機密性の高い情報へのアクセスが必要になる場合があります。契約前に、どこまでの情報にアクセスする必要があるのかを確認してください。
アクセスする情報の範囲が広い案件ほど、自分自身が情報管理の責任を負う場面が増えます。案件の規模に対して、必要以上に広い情報アクセスを求められている場合は、範囲を絞れないか相談してみる価値があります。
副業で扱う情報と、本業で扱う情報を明確に分けて管理する意識も必要です。案件ごとにやり取りするツールやフォルダを分けておくと、意図せず情報が混ざるリスクを減らせます。
07手順5|自分側の情報管理の環境を整える
案件を受ける前に、自分側でも情報管理のための最低限の環境を整えておいてください。本業で使う端末やアカウントと、副業で使う端末やアカウントを分けることが基本です。
具体的には、副業専用のメールアドレスやチャットアカウントを用意する、本業のPCに副業の資料を保存しない、案件ごとにファイルの保存場所を分けるといった対応が挙げられます。契約書やツールの整え方については『副業Webマーケターが最初に整えるべき環境、契約書とツールの最低限』で具体的に扱っています。
これらは手間のかかる作業に見えるかもしれませんが、最初に環境を分けておくと、後から情報の混在に気づいて慌てる事態を防げます。
08手順6|判断に迷う案件は受けない、または事前に確認する
ここまでの手順を踏んでも、リスクの有無がはっきりしない案件は出てきます。その場合は、無理に受けずに見送るか、受ける前に人事担当部署や社外の専門家に確認する方法を選んでください。
判断に迷ったまま案件を受けて後から問題が発覚すると、本業への影響が大きくなる可能性があります。確認や見送りにかかる時間は、後のトラブルを避けるための必要なコストだと捉えてください。
会社に副業がどう扱われるか知られるという方向性の心配については『就業規則で副業はどこまで認められるか、Webマーケターの確認手順』で扱っています。この記事で扱うのは、副業を通じて本業の情報が外部に漏れる方向性のリスクです。両者は別の問題として、それぞれ確認しておく必要があります。
09つまずきポイント(失敗例つき)
副業Webマーケターが情報漏洩リスクの確認でつまずきやすい点を、4つに整理します。
1つ目は、「バレなければ問題ない」という考え方で、同業他社の案件を受けてしまう型です。しかし、会社に知られるかどうかと、契約や義務に違反しているかどうかは別の問題です。バレなければ許されるという判断軸自体が誤りであることを、まず理解してください。
2つ目は、契約書を読まずに秘密保持義務の範囲を「たぶんこの程度だろう」と自己判断してしまう型です。実際の条項は会社によって幅があり、思っていたより対象範囲が広いケースも珍しくありません。
3つ目は、本業で得た知見や社内資料を、副業の提案や成果物の参考として無断で使ってしまう型です。本人に悪意が無くても、勤務先の情報を外部に流出させる行為にあたる可能性があります。
4つ目は逆方向の漏洩です。副業のクライアント情報を、雑談のつもりで本業の同僚に話してしまう型です。副業側にも秘密保持義務がある場合、この行為自体が契約違反にあたることがあります。
これらはどれも、事前に確認の手順を踏んでいれば防げたはずのつまずきです。焦って自己判断せず、判断に迷う場面ではそのつど確認する姿勢が、結果的に自分と本業・副業両方の信頼を守ります。
10完了の確認方法(できたかどうかの判断基準)
この記事の手順が完了したかどうかは、次の3点が確認できているかで判断してください。ひとつ目は、自分の雇用契約書・誓約書・就業規則の該当条項を実際に読み、内容を把握できていることです。
2つ目は、検討している案件のクライアントが、勤務先の顧客・取引先と重なっていないかを確認できていることです。3つ目は、本業と副業で端末・アカウント・保存先を分ける環境が、最低限整っていることです。
3点のうち、ひとつでも確認が済んでいない場合は、案件への応募や契約を急がないでください。確認が済んでから動く方が、後から生じるトラブルの芽を早い段階で摘めます。
11FAQ
同業他社の案件は受けてはいけませんか
一律に禁止されるとは限りませんが、契約や就業規則で競業避止義務が定められている場合は、対象範囲を超える案件を受けることは避けてください。判断に迷う場合は人事担当部署や専門家に確認することをおすすめします。
情報漏洩のリスクが低い案件の見分け方はありますか
勤務先と業種が離れている、直接の取引先と重ならない、機密性の高い情報へのアクセスが不要という3つの条件がそろっている案件は、比較的リスクが低いといえます。ただし、これらを満たしていても契約内容の確認は必要です。
契約書や誓約書が手元にありません。どうすればいいですか
入社時に取り交わした書類が手元に無い場合は、人事担当部署に問い合わせて確認する方法があります。書類の内容を確認しないまま案件を受けることは避けてください。
副業先にも秘密保持義務の契約を結ぶべきですか
副業先との契約に秘密保持に関する条項が含まれているかどうかも、あわせて確認しておくべき事項です。本業側だけでなく、副業側の契約内容も確認する必要があります。
情報漏洩が起きたら、どんな問題になりますか
問題の重さは、契約内容と実際の被害の程度によって会社ごとに異なります。一律の基準は無いため、就業規則の懲戒に関する項目や契約書の該当条項を確認しておくことが重要です。
本業の知識や経験を副業で活かすこと自体は問題ありませんか
一般的なスキルや経験を活かすこと自体は問題になりにくいとされていますが、勤務先固有の非公開情報や資料を直接使うことは別の問題です。境界の判断が難しい場合は、専門家に確認することをおすすめします。
副業のクライアントから本業について聞かれたら、どう答えればいいですか
本業の非公開情報に関わる質問には、答えを控えることが基本です。一般的に公開されている情報の範囲でのみ答えるようにしてください。
情報漏洩リスクの確認は、案件ごとに毎回必要ですか
はい。案件ごとにクライアントや扱う情報の範囲が異なるため、確認は案件ごとに行う必要があります。一度確認した基準をそのまま使い回すことはおすすめしません。
弁護士や社労士に相談する必要があるのはどんな場合ですか
契約書の条項が複雑で自己判断が難しい場合や、実際にトラブルの兆候がある場合は、早めに弁護士や社会保険労務士など専門家に相談することをおすすめします。
フリーランスとして独立すれば、このリスクは無くなりますか
独立後も、独立前の勤務先との間で秘密保持義務が一定期間存続する契約は珍しくありません。独立すれば無条件にリスクが無くなるわけではなく、退職時の取り決めを確認しておく必要があります。独立の判断基準は『Webマーケターとして独立する判断基準、いつどう決めるか』で扱っています。