01結論(判断の軸)

在職中と退職後、どちらで転職活動を進めるべきかに、一律の正解はありません。判断の軸は主に、収入が途切れることへの耐性、転職活動にかけられる時間、そして社会保険・年金の切り替え手続きをどう扱うかの3つです。

この記事は、退職を勧める記事ではありません。収入が途切れるリスク、社会保険の切り替え、選考での見られ方を両論で並べ、自分の状況に照らして判断できるようにすることを目的にしています。

本メディアを運営するWEBMARKSの転職サポートでも、在職中に進める人と、退職後に進める人の両方がいます。どちらが有利かを一律に断定できる集計は、WEBMARKS社内にもありません。

在職中と退職後、収入・時間・社会保険・選考での見られ方を比較したマトリクス 収入、使える時間、社会保険・年金、選考での見られ方、精神的な負荷という5つの軸で、在職中の転職活動と退職後の転職活動を対比した表。 在職中と退職後、5つの軸での比較 どちらが有利かを断定する集計はありません(一般的な傾向の整理) 在職中に進める 退職後に進める 収入 給与が途切れない 内定まで収入が無い期間が生じる 使える時間 平日日中は制約されやすい 面接日程の調整がしやすい 社会保険・年金 現職の制度がそのまま続く 自分で切り替え手続きが必要 選考での見られ方 就業中であることが安心材料になる場合も 空白期間の理由を聞かれることがある 精神的な負荷 現職との両立で負荷が増える 収入停止への焦りが生じやすい 出典: 一般的な傾向の整理(WEBMARKS社内の優劣比較集計はありません)
在職中と退職後、収入・時間・社会保険・選考での見られ方を比較したマトリクス

転職準備全体の流れは『未経験からWebマーケターへ転職する準備、何をどの順で揃えるか』で整理しています。この記事は、そのうち活動のタイミングという1つの判断に絞って掘り下げます。

02比較対象の整理(表)

在職中の転職活動と、退職後の転職活動について、代表的な違いをあらかじめ整理しておきます。どちらの進め方にも、向きやすい場面と、あらかじめ知っておきたい注意点があります。

比較軸在職中に進める退職後に進める
収入現職の給与が続くため途切れない内定まで収入が無い期間が生じる
使える時間平日の日中は制約されやすい面接日程の調整がしやすい
社会保険・年金現職の制度がそのまま続く自分で切り替え手続きが必要になる
選考での見られ方就業中であることが安心材料になる場合がある空白期間の理由を聞かれることがある
精神的な負荷現職と転職準備の両立で負荷が増える収入が止まることへの焦りが生じやすい

表からも分かるとおり、どちらの進め方にも、得意な点と注意しておきたい点があります。次の項では、この違いをふまえた判断基準を具体的に見ていきます。

03判断基準1|収入が途切れることに、どれだけ備えられるか

退職後に転職活動を進める場合、内定が決まるまでの間、収入が途切れる期間が生じます。生活費として何か月分の貯蓄があるかを、まず具体的に確認してください。

退職後は、一定の要件を満たせば雇用保険の基本手当を受け取れる場合があります。要件や手続きの詳細は、厚生労働省が公開しているハローワークの案内で確認できます(厚生労働省)。ただし、給付には一定の待機期間があり、退職直後から生活費のすべてを補えるわけではありません。

収入が途切れる期間を、シミュレーションでイメージする

「一定の待機期間がある」と言われても、実際にどれくらい収入が空くのかはイメージしづらいところです。厚生労働省の公開情報をもとに、自己都合退職のケースを月別に整理します(2026-08-08時点の制度。Aさんという架空の例で、離職前の給与総支給額が月額30万円程度だったと仮定します)。

時期収入の状況
退職した月給与収入なし。ハローワークで求職の申し込みをした日から、7日間の待期期間が始まる
退職1か月後待期満了後、給付制限期間に入るため、基本手当はまだ支給されない(正当な理由のない自己都合退職の場合、原則1か月。過去5年に2回以上自己都合退職していると3か月)
退職2か月後給付制限が明け、最初の失業認定日を迎える。認定日のおよそ7日後に、基本手当が初めて口座に振り込まれる
退職3か月後以降4週間ごとの認定を経て、基本手当の入金が継続する。内定が決まれば、その時点で受給は終了する

厚生労働省が公開している目安では、離職前の給与総支給額が月額30万円程度だった場合、基本手当の支給額はおおむね月額17.3万円程度です。離職時の年齢が60〜65歳未満の場合は、月額14.6万円程度になります。正確な金額は、離職票にもとづく個別の計算によるため、目安として捉えてください(出典: 厚生労働省 Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~)。

この表からも分かるとおり、退職してから実際に基本手当が振り込まれるまでには、2か月前後の空白が生じます。退職後に進める場合は、この期間を生活費の貯蓄でどう乗り切るかを、退職前に具体的に計算しておく必要があります。

04判断基準2|転職活動にかけられる時間

在職中に転職活動を進める場合、書類作成や企業研究の時間を、平日の勤務時間外や休日に確保する必要があります。面接の日程調整も、有給休暇や休日を使って行うことになり、応募先の都合と合わせにくい場面が出てきます。

退職後であれば、平日の日中も含めて時間の融通が利きやすくなります。ただし、時間があること自体が、必ずしも準備の質を上げるとは限りません。時間の余裕を、書類の作り込みや面接練習にどう使うかという計画性のほうが重要です。

05判断基準3|社会保険・年金の切り替えをどう扱うか

在職中は、健康保険と厚生年金が現職の制度でそのまま続きます。退職すると、健康保険は任意継続か国民健康保険への切り替え、年金は国民年金への切り替えが必要になります。

退職後に必要になる社会保険・年金の切り替え、選択肢と手続き先の整理 退職後、健康保険は任意継続か国民健康保険への切り替え、年金は国民年金への切り替えが必要になり、それぞれの手続き先が異なることを示すフロー図。 退職後に必要になる切り替え 健康保険と年金、それぞれで手続き先が異なります 退職する 健康保険(いずれかを選ぶ) 年金 任意継続 元の健康保険組合・ 協会けんぽへ申請 国民健康保険 居住する市区町村の 窓口へ申請 国民年金へ切り替え 日本年金機構・市区町村の 年金窓口で手続き どちらも退職日から一定の期限内に手続きが必要です 条件・保険料は加入先や自治体で異なるため、早めに窓口へ確認してください 出典: 日本年金機構・協会けんぽの案内をもとに編集部が整理
退職後に必要になる社会保険・年金の切り替え、選択肢と手続き先の整理

健康保険の任意継続の条件や保険料は、加入していた健康保険組合や協会けんぽに確認してください(協会けんぽ)。国民年金への切り替えについては、日本年金機構が手続きを案内しています(日本年金機構)。切り替えの手続きには期限があるため、退職を決めた時点で早めに確認しておくことをおすすめします。

06判断基準4|選考での見られ方の違い

在職中の転職活動は、就業を続けながら意思決定している姿勢として、安心材料に受け取られる場合があります。一方で、面接の日程調整が難航しやすい点は、応募先にも伝わりやすい制約です。

退職後の転職活動では、空白期間について聞かれる場面が想定されます。空白期間に何をしていたかを、事実として簡潔に説明できるように準備しておくと安心です。面接での回答の組み立て方は『Webマーケター転職の面接、聞かれる質問への回答の組み立て方』で扱っています。

07ケース別のおすすめ

在職中に進めることが向きやすいケース

生活費の貯蓄に余裕が少なく、収入を途切れさせたくない人には、在職中に進める方法が向きやすくなります。現職の業務量が比較的落ち着いており、休日や勤務時間外に準備の時間を確保できる人にも同様のことが言えます。

退職後に進めることが向きやすいケース

現職の業務量が多く、平日の日中に時間を確保することが難しい人には、退職後に進める方法が選択肢になります。生活費の貯蓄に一定の余裕があり、空白期間について面接で説明する準備ができている人にも向きやすい進め方です。

どちらか一方に決め切らない進め方

在職中と退職後は、対立する二択とは限りません。在職中に書類の準備や企業研究を進め、応募や面接の段階が近づいた時点で退職のタイミングを判断するという、段階的な進め方もあります。

段階的に進める場合の手順を、目安として示します。

  1. 在職中に、書類(職務経歴書・志望動機)の下書きと、実務経験の棚卸しを進める
  2. 求人情報や企業研究を、平日の勤務時間外や休日を使って進める
  3. 応募を開始し、書類選考が進み始めたら、面接の日程を有給休暇や休日で確保できるか見積もる
  4. 面接の日程調整が難しくなってきた段階で、退職のタイミングを具体的に検討し始める
  5. 内定が確定したら、就業規則に定められた手続きに沿って退職を申し出て、引き継ぎ期間を確保する
  6. 退職日が決まったら、社会保険・雇用保険の切り替え手続きのスケジュールを先に確認しておく

この手順のポイントは、退職を先に決めてから動くのではなく、書類・面接という選考の進み具合に合わせて、退職のタイミングを後ろ倒しで判断する点にあります。手順4の段階で時間の確保が難しいと感じたら、その時点で退職後に切り替える判断もできます。

複数のエージェントを使うかどうかも、活動のタイミングと合わせて検討する判断です。1社集中と複数併用の比較は『転職エージェントは1社集中と複数併用どちらが良いか』で扱っています。準備期間と内定率の関係を確認したい場合は『Webマーケター未経験転職の内定率データ、公表数字の読み解き方』もあわせてご覧ください。

08FAQ

退職してから転職活動をしたほうが有利ですか

一概には言えません。時間の融通は利きやすくなりますが、収入が途切れる期間が生じ、面接で空白期間の理由を聞かれる場面も想定しておく必要があります。この記事では、退職を勧める立場は取っていません。

在職中の転職活動は、いつ会社に伝えるべきですか

内定が確定し、退職の意思が固まった段階で、就業規則に定められた手続きに沿って伝えるのが一般的です。転職活動そのものを在籍中の会社に伝える義務は、通常はありません。

社会保険の切り替えは自分でやるものですか

退職後に健康保険や年金を切り替える場合、手続きは基本的に自分で行います。健康保険は協会けんぽや加入していた健康保険組合、年金は日本年金機構が窓口です。個別の条件は、それぞれの窓口で確認してください。

退職後、収入が無い期間はどれくらい続きますか

内定までの期間は人によって差があり、一律には言えません。WEBMARKSの転職支援を継続的に利用した人を対象にした集計でも、内定率は約9割(90.9%)にとどまっています。対象は2025年に活動を完了した約50名で、活動期間そのものは人によって幅があります。

面接で「なぜ在職中なのに転職活動をしているのか」と聞かれたらどう答えますか

現職を続けながら、なぜ今のタイミングで転職を考えたのかを、事実として簡潔に説明できるように準備しておくとよいでしょう。回答の組み立て方は『Webマーケター転職の面接、聞かれる質問への回答の組み立て方』で詳しく扱っています。

退職前に転職活動を始めてはいけない決まりはありますか

一般的には、退職前に転職活動を始めること自体を禁じる決まりはありません。ただし、就業時間中に転職活動を行うことは避け、勤務先の情報を選考先に持ち出さないなど、現職との関係に配慮した進め方が求められます。