01この記事でできるようになること

この記事を読むと、副業Webマーケターが開業届を出すタイミングの目安が分かります。あわせて、必要書類・記入方法・提出方法までの流れもひととおり整理できます。

開業届に関する制度は改正される可能性があるため、本記事は一般的な考え方の整理にとどめます。具体的な提出可否や申告方法についての最終判断は、所轄の税務署または税理士へ確認することをおすすめします。

02前提(対象読者・必要な準備)

対象読者は、副業でWebマーケターとして案件を受け始めた人、またはこれから受けようとしている会社員です。前提として、勤務先の就業規則で副業が認められている、または認められる見込みがあることを確認しておいてください。

副業案件を獲得するまでの全体の流れは『Webマーケター副業、初案件を獲得するまでの実務ロードマップ』で扱っています。開業届の検討は、案件獲得の動きと並行して進む人が多い手続きです。

準備するものは4つあります。開業届(正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」)の様式、本人確認書類、マイナンバーが分かるもの、屋号を使う場合はその屋号です。様式は国税庁の公式サイトからダウンロードできます。

これらをどう使うかは、後述する手順3・手順4で具体的に説明します。特別な費用は発生しません。

03手順1|開業届を出すべきかどうかを判断する

開業届は、個人が事業を開始したことを税務署に知らせるための書類です。提出は義務とされています。ただし、提出しなかった場合の罰則規定は無いという情報が広く知られています。

義務であるかどうかにかかわらず、開業届を出す実務上のメリットはいくつかあります。屋号での請求書発行がしやすくなること、青色申告の特典を受けられるようになることの2つが代表的です。

一方で、副業の所得がまだ少額で、継続するかどうかも見通せない段階では、急いで提出する必要はないという考え方もあります。判断に迷う場合は、次の手順2の目安を参考にしてください。

開業届の提出を検討する3条件 継続的な所得の見込み、屋号での請求の必要性、青色申告の活用意向という3つの条件を確認し、開業届の提出を検討するタイミングを判断するフロー図。条件をいくつ満たすかで検討の度合いが変わることを示す。 開業届の提出を検討する3条件 条件1 継続的な所得の 見込みがあるか 条件2 屋号での請求が 必要になったか 条件3 青色申告の特典を 使いたいか 満たす条件が少ない → 提出を急がず様子を見る 満たす条件が多い → 提出の検討を始める 3条件のどれか一つでも当てはまれば提出を検討する人が多いとされています(2026年8月7日時点の一般的な考え方)。 正確な判断は個別の状況によるため、税務署・税理士への確認をおすすめします。
開業届の提出を検討する3条件(継続的な所得の見込み・屋号での請求の必要性・青色申告の活用意向)と判断の目安

04手順2|出すタイミングの目安を確認する

開業届を出すタイミングに、決まった正解はありません。ただし、一般的には次のような節目で検討する人が多いとされています。

継続的な案件が2件目以降に進んだとき、屋号での請求書発行を求められたとき、そして青色申告の特典を使いたいと考え始めたときの3つです。いずれも「事業として続けていく見通しが立った段階」という共通点があります。

WEBMARKSの実績データでは、案件獲得者の70%以上が2案件以上を獲得しています(出典: 2020年〜2025年の案件獲得データ集計)。2件目に進む人が一定数いる実態を踏まえると、開業届を検討する節目として「2件目」を目安に置く考え方は実態にも合っています。

税務上、所得の種類(雑所得か事業所得か)の判断は個別の状況によって扱いが異なります。この記事では所得区分そのものの判定基準には立ち入らず、開業届を出すかどうかの実務的な目安の整理にとどめます。

05手順3|開業届に必要な書類を揃える

開業届の提出には、いくつかの添付書類が必要です。開業届本体(個人事業の開業・廃業等届出書)に加えて、本人確認書類の写しとマイナンバーが分かる書類の写しを用意します。

本人確認書類は、運転免許証やマイナンバーカードなど、氏名と生年月日が確認できるものが一般的に使われます。マイナンバーカードを持っていれば、本人確認とマイナンバー確認を1枚で兼ねられます。

屋号を使う予定がある場合は、この段階で候補を決めておくとスムーズです。屋号は提出後に変更できる場合がありますが、請求書や名刺に一度使い始めると変更の手間が増えます。早めに決めておくことをおすすめします。

06手順4|開業届の記入方法を確認する

開業届の様式には、いくつかの記入項目があります。主なものは、提出先の税務署名、納税地の住所、氏名・生年月日・マイナンバー、職業、屋号(任意)、開業日、事業の概要です。

納税地は、通常は自宅の住所を記入します。事業の概要は「Webマーケティングに関するコンサルティング業務」のように、行っている業務を簡潔に記載します。

開業日は、実際に案件を受け始めた日、または開業届を出す少し前の日を記入する人が多いとされています。開業日をいつにするかは、青色申告の申請期限にも関わるため、手順6とあわせて検討してください。

従業員を雇う予定がない場合、給与等の支払いに関する欄は記入不要です。副業として始めるほとんどの人は、この欄への記入は発生しません。

記入内容に不安がある場合は、税務署の窓口で相談しながら記入することもできます。無理に自己判断で埋めず、不明点はその場で確認する方が、後の手戻りを防げます。

07手順5|提出方法を選ぶ(税務署窓口・郵送・e-Tax)

開業届の提出方法は、主に3つあります。税務署の窓口へ直接持参する方法、郵送する方法、そしてe-Taxを使ってオンラインで提出する方法です。

開業届の提出方法3種類の比較 税務署窓口・郵送・e-Taxという3つの提出方法を、所要時間の目安と控えの受け取り方という2つの軸で比較する表形式の図。 開業届の提出方法3種類の比較 提出方法 所要時間の目安 控えの受け取り方 窓口へ持参 その場(待ち時間あり) その場で収受印つき 郵送 発送〜返送で数日 返信用封筒で後日届く e-Tax オンラインで即日提出 電子データで受信通知 e-Taxの利用にはマイナンバーカード等の事前準備が必要です。 どの方法でも、提出後の控えは大切に保管してください(2026年8月7日時点の一般的な取り扱い)。
開業届の提出方法3種類(窓口・郵送・e-Tax)の所要時間と控えの受け取り方の比較

窓口へ持参する方法は、その場で記入内容を確認してもらえる安心感があります。控えに収受印を押してもらい、その場で受け取れる点もメリットです。平日の日中に時間を確保できる人に向いています。

郵送する場合は、開業届の原本と控え用のコピーを同封し、返信用封筒を入れておきます。そうすると、収受印付きの控えを返送してもらえます。平日に税務署へ行く時間が取りにくい人に向いた方法です。

e-Taxを使う場合、オンラインで完結できるため、税務署へ行く必要がありません。ただし、事前にマイナンバーカードとICカードリーダー、または対応するスマートフォンの準備が必要です。

いずれの方法でも、提出した控えは大切に保管してください。屋号入りの銀行口座を開設する際や、確定申告のときに必要になる場合があります。

08手順6|青色申告承認申請書もあわせて検討する

開業届とあわせて検討したいのが、青色申告承認申請書です。青色申告を選ぶと、確定申告で受けられる控除額が大きくなるなどのメリットが一般的に知られています。

開業届と青色申告承認申請書、2つの提出期限の関係 開業日を起点にして、開業届の提出目安(1か月以内)と青色申告承認申請書の提出期限(開業日から2か月以内、またはその年の3月15日のいずれか早い方)を、同じ時間軸の上下2段で示す図。 開業日を起点にした2つの提出期限 開業日 開業届 目安:1か月以内 青色申告承認申請書 目安:開業日から2か月以内 またはその年の3/15の早い方 2つの期限は別の手続きのため、片方だけ意識すると間に合わないことがあります。 正確な期限は国税庁の公式情報でご確認ください(2026年8月7日時点)。
開業届と青色申告承認申請書、開業日を起点にした2つの提出期限の関係を示すタイムライン

青色申告承認申請書の提出期限は、開業日から2か月以内、またはその年の3月15日までのいずれか早い方が目安とされています。正確な期限は国税庁の公式情報でご確認ください。開業届の提出日と申請書の期限がずれることがあるため、あわせて確認しておく必要があります。

青色申告には、複式簿記での帳簿づけなど、白色申告に比べて手間が増える面もあります。メリットと手間のどちらを優先するかは、副業の規模や使える時間によって判断が分かれます。

青色申告と白色申告の具体的な違いや選び方は、別の記事で詳しく扱う予定です。この記事では、開業届と同じタイミングで検討すべき手続きがあるという点だけ押さえてください。

09つまずきポイント(失敗例つき)

副業Webマーケターが開業届の手続きでつまずきやすい点を、4つに整理します。

1つ目は、開業届を出すタイミングを逃し、青色申告承認申請書の期限にも間に合わなくなってしまう型です。開業届と青色申告の申請は別の手続きですが、期限が連動しています。片方だけを意識していると間に合わないことがあります。

2つ目は、開業届を出すと会社に副業が知られると誤解し、必要以上に提出をためらってしまう型です。開業届の提出自体が勤務先に通知される制度ではないという情報が一般的に知られています。ただし、就業規則上の副業の扱いとは別の話であることに注意してください。

3つ目は、開業届と確定申告を同じ手続きだと勘違いしてしまう型です。開業届は事業開始の届け出であり、確定申告は毎年の所得を申告する別の手続きです。開業届を出したからといって、その年の確定申告が自動的に免除されるわけではありません。

4つ目は、屋号を決めずに記入欄で悩み、提出そのものを先延ばしにしてしまう型です。屋号は任意記載のため、決まっていなければ空欄のまま提出しても問題ないとされています。

これらはどれも、事前に手順と期限の関係を知っておくだけで避けられるつまずきです。焦って自己判断せず、不明点はそのつど税務署や税理士に確認する姿勢が、結果的に手戻りを減らします。

10完了の確認方法(できたかどうかの判断基準)

開業届の手続きが完了したかどうかは、収受印が押された控えを手元に保管できているかで確認できます。窓口提出ならその場で、郵送やe-Taxなら後日届く控えを確認してください。

青色申告承認申請書もあわせて提出した場合は、そちらの控えも別に保管しておく必要があります。2つの書類は別々の申請のため、片方の控えだけで両方が完了したと判断しないよう注意してください。

控えが手元に揃ったら、屋号入りの銀行口座の開設や、請求書のフォーマット整備など、次の実務に進めます。単価や請求書の作り方は『Webマーケターの単価相場、副業とフリーランスの実額データ』であわせて確認できます。

開業届はあくまで副業の延長で出す人も、フリーランスへの移行を見据えて出す人もいます。独立の判断基準は『Webマーケターとして独立する判断基準、いつどう決めるか』で扱っています。

11FAQ

開業届を出さないと副業を続けられませんか

開業届を出していなくても、副業として案件を受けること自体は可能です。ただし、屋号での請求書発行や青色申告の特典を使いたい場合は、開業届の提出が前提になります。

開業届を出すと会社に副業が知られますか

開業届の提出自体が勤務先へ直接通知される制度ではないという情報が一般的に知られています。ただし、就業規則上の副業の扱いは別の話のため、あわせて確認しておくことをおすすめします。

開業届はいつまでに出す必要がありますか

国税庁の手続き案内では、事業を開始した日が属する年分の確定申告期限までに提出するとされています(出典:国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」2026年8月時点)。「1か月以内」という目安も広く知られていますが、現在の公式案内では確定申告期限までが基準です。提出が遅れた場合の罰則規定は無いという情報も知られています。この記事では、2件目の案件が見え始めた時期を一つの目安として紹介しました。

副業の所得が少ないうちは開業届を出さなくてもいいですか

所得が少額で継続の見通しが立っていない段階では、急いで提出する必要はないという考え方もあります。屋号での請求や青色申告のメリットを使いたくなった時点で検討する人が多いようです。

開業届を出すと確定申告が不要になりますか

いいえ。開業届は事業開始の届け出であり、確定申告は毎年の所得を申告する別の手続きです。開業届を提出しても、所得の状況によっては確定申告が必要になります。

屋号は開業届を出す前に決めておく必要がありますか

屋号の記入は任意です。決まっていなければ空欄のまま提出しても問題ないとされています。後から屋号を使いたくなった場合の変更方法は、税務署にご確認ください。

青色申告承認申請書は開業届と同時に出す必要がありますか

同時に提出する必要はありませんが、期限がそれぞれ異なるため注意が必要です。開業日から2か月以内、またはその年の3月15日までのいずれか早い方が一般的な目安とされています。

e-Taxでの提出に必要な準備は何ですか

マイナンバーカードと、ICカードリーダーまたは対応するスマートフォンが一般的に必要とされています。最新の利用条件は国税庁の公式サイトで確認することをおすすめします。

開業届を出した後、廃業したくなったらどうすればいいですか

事業をやめる場合は、廃業届(個人事業の開業・廃業等届出書の廃業用)を提出する手続きが一般的に案内されています。詳しい手続きは税務署にご確認ください。

開業届を出すタイミングは、独立のタイミングと同じですか

同じとは限りません。副業のまま開業届だけ出す人もいれば、独立のタイミングで初めて開業届を出す人もいます。独立の判断基準は『Webマーケターとして独立する判断基準、いつどう決めるか』で扱っています。

開業届を出す前に、税理士に相談したほうがいいですか

相談は必須ではありませんが、判断に迷う場合は早めに相談する方が、後の手続きがスムーズになりやすいとされています。特に青色申告や経費計上を検討している場合は、相談のメリットが大きくなります。

この記事の税務に関する情報は、いつ時点のものですか

本記事は2026年8月7日時点で確認できる一般的な情報を整理したものです。税制は改正される可能性があるため、最新の内容は国税庁の公式サイトや税務署でご確認ください。