01この記事でできるようになること
副業でWebマーケターとして働くとき、案件は1件で終わらないことが珍しくありません。複数のクライアントを同時に抱える段階に進んだとき、稼働をどう配分し、締切の衝突をどう避けるかがわかります。
あわせて、クライアントをまたいだ情報の混線や、案件同士がぶつかる利益相反のリスクを事前に防ぐ考え方もわかります。この記事は、特定の施策の進め方ではなく、複数の案件を同時に抱えるという働き方そのものを扱います。
02前提(対象読者・必要な準備)
この記事は、副業Webマーケターとしてすでに1件以上の案件を受けており、2件目以降のクライアントを検討している人を対象にしています。初めての案件を獲得するまでの流れは『Webマーケター副業、初案件を獲得するまでの実務ロードマップ』で扱っています。
手元に用意しておきたいのは、現在抱えている案件の一覧と、それぞれにかかっているおおよその稼働時間です。正確な記録が無くても構いません。まずは大まかな感覚を書き出すところから始めてください。
WEBMARKSの実績データでは、案件獲得者の70%以上が2案件以上を獲得しています。対象は2020年から2025年の案件獲得データで、2案件以上を獲得した人数を集計したものです。複数クライアントを並行して抱える働き方は、副業Webマーケターにとって珍しい状態ではありません。
03手順1|自分の稼働可能時間を数値で把握する
複数クライアントを管理する最初の関門は、案件の数ではなく、自分がどれだけの時間を稼働に充てられるかを把握できていないことです。本業のスケジュールを踏まえずに案件を受けると、後から時間が足りないことに気づきます。
まず1週間のうち、副業に充てられる時間帯を曜日ごとに書き出してください。平日の夜、休日の午前など、生活パターンに沿った枠で構いません。次に、その枠から急な予定で削られやすい時間を差し引き、実際に使える時間の目安を出します。
この時間の目安は、新しい案件を受けるかどうかを判断する基準にもなります。すでに埋まっている時間枠に新しい案件を無理に詰め込むと、どのクライアントに対しても余裕のない対応になりやすくなります。
本業と副業の時間配分をどう作るかは『本業と両立しながらWebマーケター副業の時間を作る具体的な方法』で詳しく扱っています。複数クライアントの管理は、この時間配分ができていることを前提に成り立ちます。
04手順2|クライアントごとの締切とタスクを一元管理する
稼働時間の目安が見えたら、次はクライアントごとの締切とタスクを、1か所にまとめて見られる状態を作ります。クライアントごとに別々の場所でメモを取っていると、締切が重なっていることに気づくタイミングが遅れます。
一元管理といっても、高機能な専用サービスを新たに契約する必要はありません。手元にあるカレンダーや表計算ソフトでも、締切日・タスク内容・クライアント名を並べて書き出せば十分に機能します。大事なのは道具そのものより、1か所にまとめて見る習慣です。
締切を書き出すときは、クライアントから指定された最終納期だけでなく、自分の中での中間目標もあわせて記録してください。中間目標を置くことで、締切直前に複数案件が同時に重なる事態を早めに察知できます。
一元管理表に実際に列を埋めた例を示します。数字・社名はすべて架空の例です。
| クライアント | タスク内容 | 最終納期 | 中間目標 | 週あたりの想定稼働 | 状況 |
|---|---|---|---|---|---|
| クライアントA(架空の例) | 月次SEOレポート作成 | 8月25日 | 8月20日にデータ抽出完了 | 3時間 | 進行中 |
| クライアントB(架空の例) | 広告バナー3案制作 | 8月22日 | 8月18日にラフ案共有 | 4時間 | 確認待ち |
| クライアントC(架空の例) | ブログ記事2本執筆 | 8月28日 | 8月24日に初稿提出 | 5時間 | 未着手 |
この表のように、クライアント名・タスク内容・最終納期・中間目標・想定稼働・状況の6列を並べておくと、締切の重なりや稼働の偏りに気づきやすくなります。列の項目数や粒度は、自分の管理しやすい形に調整して構いません。最初は簡易な形で始め、案件数が増えてきたタイミングで列を足していく進め方でも十分です。
05手順3|情報の混線を防ぐルールを決める
複数のクライアントを抱えると、資料やメッセージの混線が起きやすくなります。別のクライアントの資料を誤って共有してしまう、送るはずの相手を間違えるといったミスは、案件数が増えるほど起きやすくなります。
混線を防ぐ基本は、クライアントごとに保存場所とやり取りの記録を分けることです。ファイルの保存フォルダをクライアント単位で分け、ファイル名にもクライアント名や案件名を含めておくと、探すときの迷いが減ります。
メッセージのやり取りについても、可能な限りクライアントごとに窓口を分けておくと安心です。1つの窓口で複数クライアントの話題を同時に扱うと、送信前の最終確認で見落としが起きやすくなります。
固有名詞や数字を含む資料を送る前には、宛先とファイルの中身が一致しているかを毎回確認する習慣をつけてください。この一手間が、情報の混線による信頼低下を防ぐ確実な方法です。
06手順4|利益相反のリスクを事前に確認する
複数クライアントを抱えるときにもう一つ注意したいのが、クライアント同士が競合関係にある場合の利益相反です。片方のクライアントで得た知見を、もう一方のクライアントに流用してしまうと、信頼関係を損なう可能性があります。
新しい案件を検討する段階で、既存のクライアントと業界・商圏が重なっていないかを確認してください。重なりがある場合は、案件を受ける前にどこまでの情報を共有してよいかを、双方に確認しておくと安心です。
利益相反が疑われる場合の対応は一律ではありません。案件そのものを断る、扱う業務範囲を限定する、双方に事情を伝えて了承を得るなど、状況に応じた判断が必要です。割に合わない依頼の断り方は『Webマーケター案件、割に合わない依頼の断り方』で扱っています。
新しい案件を検討する段階で、自分に次のように問いかけてみてください。
- 既存クライアントと、業界・商圏が重なっていないか
- 既存クライアントで得た数字やノウハウを、新しい案件にそのまま使う場面が想定されないか
- 双方のクライアントが、お互いの存在を知っても問題ない関係か
- 業務範囲を絞れば、利益相反にならない形で両方を引き受けられないか
- 判断に迷う場合、契約前に双方へ事情を伝えて了承を得られる余地があるか
この質問すべてに問題なく答えられない場合は、案件を受ける前に一度立ち止まり、業務範囲の限定や、どちらか一方を見送る判断も含めて検討してください。判断を急がず、疑問点は契約前にクライアントへ確認する時間を確保することをおすすめします。
07手順5|稼働の限界に近づいたサインを見極め、早めに調整する
案件を管理する仕組みを作っても、稼働そのものが限界に近づく場面は出てきます。締切前に連絡への返信が遅れる、途中経過の共有を後回しにしてしまうといった変化は、稼働が限界に近づいているサインです。
こうしたサインに気づいたら、新しい案件を一時的に見送る、既存のクライアントに納期の相談をするなど、早めに調整してください。限界を超えてから対応するより、兆候の段階で手を打つほうが、どのクライアントとの関係も守りやすくなります。
案件を断る、あるいは条件を見直す判断は、遠慮するより早めに伝えるほうが、結果的に信頼を保ちやすい傾向があります。稼働の調整は、案件を失うことではなく、続けられる働き方を保つための手段だと捉えてください。
08つまずきポイント(失敗例つき)
複数クライアントを並行して管理するときに、共通してつまずきやすい点を整理します。
- 稼働時間を数値で把握しないまま、感覚だけで新しい案件を引き受けてしまう
- クライアントごとの締切を別々の場所で管理し、重なりに気づくのが遅れる
- 資料やメッセージの宛先を確認せず、別のクライアントに誤って送ってしまう
- 業界が重なるクライアントの案件を、利益相反の確認なしに引き受けてしまう
- 稼働が限界に近づいているサインに気づかず、対応が遅れて信頼を落とす
特に多いのが、締切の重なりに気づかないまま案件を受けてしまうケースです。手順2で扱った一元管理を最初の案件から習慣にしておくと、案件数が増えたときの負担を抑えられます。
09完了の確認方法(できたかどうかの判断基準)
この記事の手順が身についたかどうかは、次の状態になっているかで確認できます。すべてのクライアントの締切とタスクを、1か所で一覧できる状態になっているかどうかです。
資料の保存場所とやり取りの窓口が、クライアントごとに整理されているかもあわせて確認してください。新しい案件を検討するとき、稼働の余裕と利益相反のリスクを受ける前に自分の言葉で説明できる状態になっていれば、この記事の目的は達成できています。
10FAQ
複数クライアントは何件まで抱えてよいですか
上限は案件の内容や1件あたりの稼働時間によって大きく変わるため、一律の件数は示せません。手順1で出した稼働時間の目安を超えない範囲で、無理のない件数から始めることをおすすめします。
クライアントによって管理の仕方を変えてもよいですか
構いません。クライアントの規模や連絡頻度によって、必要な管理の細かさは変わります。共通して守りたいのは、締切とタスクを1か所で一覧できる状態にしておくことです。
締切が重なってしまった場合はどうすればよいですか
気づいた時点で、早めにクライアントへ相談することをおすすめします。納期の調整や優先順位の相談は、直前に伝えるより早めに伝えるほうが、信頼を保ちやすくなります。
利益相反かどうか判断がつかない案件はどうすればよいですか
判断に迷う場合は、既存のクライアントとの業務範囲を書き出し、重なりがないかを具体的に確認してください。それでも判断がつかない場合は、案件を受ける前に双方へ事情を伝え、了承を得る方法もあります。
稼働管理に専用のツールは必要ですか
必須ではありません。手元のカレンダーや表計算ソフトでも、クライアント名・締切・タスクを並べて記録すれば十分に機能します。契約書やツールの最低限は『副業Webマーケターが最初に整えるべき環境、契約書とツールの最低限』で扱っています。
クライアントが増えるほど単価は上がりますか
案件数と単価の関係は一律ではありません。単価をどう考えるかは、案件の内容や実績の積み重ね方によって変わります。
1つのクライアントに集中したほうがよい場合はありますか
案件の規模や本業との両立状況によっては、1つのクライアントに絞ったほうが安定する場合もあります。複数抱えるかどうかは、稼働の余裕を確認したうえで判断してください。
情報の混線を防ぐために、契約書に盛り込める内容はありますか
秘密保持に関する条項を契約書に含めておくと、クライアントごとの情報を分けて扱う意識づけになります。契約前に確認しておきたい項目は、環境整備を扱った記事でまとめています。