01この記事でできるようになること
この記事を読むと、実績がまだ1〜2件しかない段階で受け取った依頼を、実績の量に関わらず断ってよい依頼と、条件を整えれば受けてよい依頼に分けて判断できるようになります。あわせて、実績が薄いことを理由に弱気な伝え方をせず、断る力を持つための考え方を扱います。
実績がある段階の断り方は『Webマーケター案件、割に合わない依頼の断り方』で単価・工数・裁量・支払条件の4軸から扱っています。この記事はその手前、実績がまだ薄く、比較対象や代わりの依頼が少ない段階に絞って掘り下げます。
02前提(対象読者・必要な準備)
対象読者は、副業でWebマーケターとしての実績がまだ1〜2件しかない人、またはこれから初案件を目指している人です。すでに複数の継続クライアントを抱えている人は、この記事より『Webマーケター案件、割に合わない依頼の断り方』の内容が近い可能性があります。
準備するものは、これまでに受けた依頼のやり取りが分かるメッセージや資料です。まだ依頼を受けたことがない場合は、この記事を読んで判断の型を先に持っておくと、実際に依頼が来たときに慌てずに済みます。
初案件をまだ獲得していない場合は『実績ゼロのWebマーケター副業、最初の営業文はどう書くか』もあわせて確認しておくと、この記事の内容とつながりやすくなります。副業全体の流れを先に把握したい場合は『Webマーケター副業、初案件を獲得するまでの実務ロードマップ』も参照してください。
03手順1|実績が薄い段階特有の「断りにくさ」を言語化する
実績が薄い段階の断りにくさは、単価や条件の話だけでは説明できません。背景には3つの不安があります。
1つ目は、断ったら次の依頼が来ないのではという不安です。2つ目は、比較できる依頼が少なく、この依頼が良いのか悪いのか判断する基準を持てない不安です。3つ目は、本業以外の収入源がまだ乏しく、目の前の依頼を逃したくない不安です。
これらの不安は、実績が積み上がるにつれて自然に和らいでいきます。しかし実績が薄い段階では、この不安を先に自覚しておかないと、明らかに割に合わない依頼まで受け入れてしまいやすくなります。まずは自分がどの不安を強く感じているかを、依頼を受ける前に把握しておいてください。
不安そのものをなくす必要はありません。不安があることを前提に、断ってよい依頼の型をあらかじめ決めておく方が、実際の判断は楽になります。次の手順では、その型を具体的に整理します。
04手順2|実績の量に関わらず断ってよい依頼の型を先に決めておく
割に合わない依頼には、実績の有無に関わらず断ってよい「構造的な特徴」があります。代表的なものを4つ挙げます。
1つ目は、成果物の範囲が着手前に確定しないまま進めようとする依頼です。2つ目は、無償の試作や提案を、実務に近い分量で繰り返し求める依頼です。3つ目は、支払いの時期や金額が書面やメッセージで明確にならない依頼です。4つ目は、実績が無いことを理由に、通常より著しく低い金額を提示してくる依頼です。
これらは、実績の量とは関係なく成立する判断基準です。「実績が無いから受けるしかない」という考え方を持ち込まず、依頼そのものの構造を見て判断してください。取引条件を明確にすることを求める制度も整備されています(参考: 公正取引委員会公式サイト・厚生労働省公式サイト)。制度の詳細な適用は個別の契約によって異なるため、判断に迷う場合は専門家に確認することをおすすめします。
一方で、実績が薄い段階だからこそ受ける価値がある依頼もあります。単価が相場よりやや控えめでも、成果物の範囲と支払条件が明確で、実績として提示しやすい内容であれば、検討の余地は十分にあります。すべてを断る必要はなく、構造的な問題があるかどうかで線を引くことが重要です。
05手順3|全部受けるか断るかの二択にせず、部分的に受ける案を用意する
実績がある段階であれば、条件が合わない依頼はそのまま断っても、他の依頼で埋め合わせがききます。しかし実績が薄い段階では、依頼そのものが少なく、全部を断るという選択肢は現実的でない場面があります。
そこで有効なのが、依頼の一部だけを受ける代替案です。たとえば、依頼された作業範囲のうち、実績として提示しやすい部分だけに絞って受ける、無償ではなく低めの金額を明示したうえで期間を区切って受ける、といった形です。全部を受けるか断るかの二択ではなく、条件を調整した第三の案を用意しておくと、判断の幅が広がります。
部分的に受ける案を出すときは、範囲と金額をあいまいにしないことが前提です。範囲が曖昧なまま「一部だけ」と伝えると、結局は依頼元の期待が広がり、当初の依頼と同じ分量を求められることがあります。受ける範囲は、着手前に文字で残しておいてください。
06手順4|断るときの伝え方を、実績の少なさを理由にしない
断る連絡の基本的な型は、感謝、結論、簡潔な理由、今後につながる一言の4つで構成します。この型自体は『Webマーケター案件、割に合わない依頼の断り方』と共通です。実績が薄い段階で特に意識したいのは、理由の伝え方です。
「実績がまだ少ないので」という理由を自分から出すと、依頼元に対して弱みを見せることになり、次に依頼が来たときも同じ理由で低い条件を提示されやすくなります。理由は、実績の有無ではなく、依頼内容そのものに基づいて伝えてください。たとえば「今回ご相談いただいた範囲では、現在の稼働状況で十分な質を担保できません」という伝え方であれば、実績の話を持ち出さずに済みます。
理由を詳しく説明しすぎないことも重要です。詳しく説明するほど、依頼元がその理由に対して条件変更を提案してくることがあります。判断の余地を残したくない場合は、簡潔な理由にとどめてください。
07手順5|断った記録を残し、実績が増えるにつれてラインを見直す
断った依頼、部分的に受けた依頼、条件を調整して受けた依頼は、簡単な記録として残しておいてください。依頼の内容、判断した理由、その後の結果の3つをメモするだけで十分です。
記録を残しておくと、実績が増えるにつれて、自分の判断ラインがどう変わってきたかを振り返ることができます。実績が薄い段階で「これは受けるべきではない」と感じた基準は、実績が積み上がるにつれて緩めても問題ない場合と、逆に厳しくすべき場合の両方があります。記録が無いと、その変化に気づきにくくなります。
WEBMARKSの実績データでは、案件獲得者の70%以上が2案件以上を獲得しています(出典: 2020年〜2025年の案件獲得データ集計)。実績が1件から複数へ増える過程は、判断のラインを見直す自然な機会になります。
08つまずきポイント(失敗例つき)
実績が薄い段階で案件を断る場面では、いくつかの典型的なつまずきがあります。
- 実績が無いことを理由に、成果物の範囲が確定しないまま依頼を受けてしまう
- 断ると次が来ないと思い込み、無償の追加作業を繰り返し引き受けてしまう
- 「実績作りのため」と考え、業務範囲が際限なく広がる依頼を受け入れてしまう
- 断る際に自分から「実績が無いので」と伝え、次の交渉で弱い立場になってしまう
- 一度受けた著しく低い金額の案件が、その後の自分の単価の基準にされてしまう
特に多いのは、1つ目と5つ目のつまずきです。範囲が確定しないまま着手すると、後から追加作業を求められても断る根拠を示しにくくなります。低い金額を一度受け入れると、次の依頼でも同じ水準を期待されやすくなります。どちらも、依頼を受ける前に条件を文字で確認しておくことで、多くは防げます。
09完了の確認方法(できたかどうかの判断基準)
この記事の内容が実践できているかどうかは、次の4点で確認できます。
- 断ってよい依頼の構造的な特徴(範囲不明・無償の繰り返し・支払条件不明・著しい低単価)を自分の言葉で説明できる
- 全部受ける・全部断るの二択以外に、部分的に受ける案を検討した
- 断る際に、実績の少なさを理由として持ち出さずに伝えられた
- 依頼への対応を記録し、実績が増えたときに判断ラインを見直す準備ができている
4点すべてが揃っていなくても、焦る必要はありません。特に3つ目は意識しないと崩れやすい項目なので、次に依頼が来たときにあらためて確認してください。
10FAQ
実績がまだ1件もありません。この記事の内容は使えますか
使えます。実績がまだ無い段階でも、断ってよい依頼の構造的な特徴は同じです。依頼を受ける前に判断の型を持っておくと、実際に依頼が来たときに落ち着いて判断できます。
実績が薄い段階は、多少条件が悪くても受けるべきですか
条件の悪さの種類によります。単価がやや控えめでも範囲と支払条件が明確な依頼と、範囲や支払いが曖昧な依頼は分けて考えてください。後者は実績の量に関わらず断ってよい依頼です。
断ったら本当に次の依頼は来なくなりますか
丁寧に断っていれば、依頼そのものが来なくなる可能性は低いと考えられます。むしろ条件が合わない依頼を無理に受け続けて質を落とすほうが、長期的には信頼を損ないやすくなります。
部分的に受ける案は、どんな依頼にも使えますか
範囲と金額を明確にできる依頼であれば使いやすい方法です。範囲そのものが曖昧な依頼には向きません。その場合は、先に範囲を明確にする相談から始めてください。
実績が無いことを、依頼元に正直に伝えてはいけませんか
実績の有無を伝えること自体は問題ありません。ただし、断る理由として実績の少なさを持ち出すと、交渉で弱い立場になりやすいという注意点です。理由は依頼内容に基づいて伝えてください。
一度低い金額で受けてしまいました。どう立て直せばいいですか
その案件の単価をそのまま基準にする必要はありません。次の依頼からは、相場を踏まえた金額を改めて提示してください。
断る連絡は、どのタイミングで送るべきですか
条件の問題に気づいた時点で、早めに伝えるほうが依頼元にとっても影響が小さく済みます。着手後に問題に気づいた場合は、進捗をどう扱うかを含めて誠実に相談してください。
実績が増えたら、この記事の判断基準は変える必要がありますか
はい。実績が積み上がるにつれて、代わりの依頼が増え、断りやすさそのものが変わります。実績が一定量そろった段階からは『Webマーケター案件、割に合わない依頼の断り方』の4軸の考え方に切り替えることをおすすめします。
契約書や取引条件について、どこまで自分で確認すればいいですか
最低限、業務範囲・金額・支払い時期の3つは、着手前に書面やメッセージで残すことをおすすめします。契約書とツールの最低限は『副業Webマーケターが最初に整えるべき環境、契約書とツールの最低限』で扱っています。
断ることに罪悪感があります。慣れるまで時間がかかりますか
多くの人が、最初は断ることに抵抗を感じます。断ってよい依頼の基準をあらかじめ持っておき、実際に断って記録を残す経験を重ねることで、判断への抵抗は少しずつ小さくなっていきます。