01結論(3行)
Webマーケターの転職先は、事業会社(インハウス)・代理店・支援会社の3類型に大きく分かれます。どれが優れているかではなく、担当領域の広さ、裁量の大きさ、専門性の深め方のどれを今優先したいかで選ぶ判断です。この記事は特定の企業を評価するものではなく、3つの型そのものの違いを整理します。
02転職先の3類型、何が違うのか|全体像
Webマーケターの転職先は、大きく3つの型に分けて考えると整理しやすくなります。1つ目は、自社のサービスや商材を扱う事業会社(インハウス)です。2つ目は、複数クライアントの広告運用などを担う代理店です。3つ目は、SEOやコンテンツ制作など特定領域の支援を専門にする支援会社です。
3つの型は、正社員として働く先の分類であり、フリーランスや副業の働き方とは別の軸です。フリーランスとしての案件獲得チャネルの違いは『Webマーケター案件獲得、直取引・代理店・エージェントの使い分け』で扱っています。この記事では転職先としての3類型に絞って整理します。
3類型を分ける主な軸は、担当領域の広さ、日々の業務でどれだけ裁量を持てるか、そして専門性をどう深めていくかの3点です。事業会社は1つの商材を深く担当しやすく、代理店は複数クライアントを横断して経験の幅を広げやすく、支援会社は特定のスキル領域を先鋭化させやすいという傾向があります。
この傾向は一律に当てはまるものではありません。同じ事業会社でも規模や部門構成によって裁量の大きさは変わりますし、代理店にも特定業界に特化した会社があります。あくまで転職先を検討する出発点として、3類型の傾向を押さえてください。
転職の準備そのものの進め方は『未経験からWebマーケターへ転職する準備、何をどの順で揃えるか』で扱っています。この記事では、準備が整った後に選ぶ転職先の違いに絞って整理します。
03事業会社(インハウス)で働くWebマーケターの特徴
事業会社のマーケティング担当は、自社が持つ1つの商材やサービスに向き合い続けます。担当する領域は代理店より狭くなりやすい一方、その商材について誰よりも深く理解する立場になれます。
施策の企画から実行、効果検証までを一貫して自分が担当できる範囲も、事業会社の特徴です。広告運用だけ、SEOだけといった工程の切り出しではなく、マーケティング活動全体のPDCAサイクルに関わる機会が生まれやすくなります。
事業内容や業界そのものへの理解が深まりやすい分、他業界・他商材への転用が利きにくい経験になる場合もあります。次の転職で別の業界に移りたいなら、経験のどの部分が転用できるかを自分で言語化しておく必要があります。
事業会社では、経営会議や事業計画にマーケティング担当として関わる機会が生まれることもあります。数字を扱う場面も多く、マーケティング指標だけでなく事業全体の指標を意識する働き方に慣れていく人が多い傾向です。
事業会社とエージェンシー(代理店)で働く環境の基本的な違いは『インハウスとエージェンシー、Webマーケターが働く環境の違い』でも整理しています。この記事では、支援会社を含めた3類型として、さらに踏み込んで比較します。
「自社ECサイトのCRM施策全般を、企画から実行まで一貫してご担当いただきます」(架空の例)
このように、特定の商材やチャネルを主語にした表現が使われやすいのが事業会社の求人票の特徴です。「一貫して」「自社の」といった言葉が入っている場合、担当領域が絞られる代わりに裁量が広い可能性があります。
04代理店で働くWebマーケターの特徴
代理店で働くWebマーケターは、複数のクライアントを同時に、あるいは短いサイクルで担当します。業界も予算規模も異なる案件に触れられるため、経験の幅を短期間で広げやすい環境です。
一方で、1つのクライアントに深く関わり続ける期間は、事業会社に比べて短くなりがちです。案件の入れ替わりが速いぶん、施策の中長期的な結果まで見届けにくい場面もあります。
国の産業分類でも、広告に関する事業は独立した業種として区分されているといわれています。代理店という業態が、事業会社の一部門とは異なる成り立ちを持つ会社であることの背景になっています。
代理店では、複数クライアントへの提案経験を通じて、初対面のクライアントへ短期間で信頼を得る力が鍛えられやすくなります。この力は、将来フリーランスとして独立する場合や、直取引の案件を増やしたい場合にも生きる経験です。
「複数業界のクライアントを担当し、広告運用の戦略設計から日々の運用改善まで対応いただきます」(架空の例)
代理店の求人票では、「複数クライアント」「多業種」といった言葉が使われる傾向があります。担当社数の目安が書かれている場合は、面接で1人あたりの平均担当社数を確認しておくと、稼働のイメージがつかみやすくなります。
05支援会社で働くWebマーケターの特徴
支援会社は、SEOコンサルティングやコンテンツ制作、CRO(成果改善)といった特定の専門領域を軸に、複数のクライアントへ支援を提供する会社です。代理店が広告運用など複数の施策を横断的に扱うのに対し、支援会社は特定の工程を深く掘り下げる傾向があります。
特定領域の専門性を先鋭化させたい人にとって、支援会社は有力な選択肢になります。同じ領域の案件を数多くこなすことで、その分野における知見や引き出しの数が蓄積されやすくなります。
一方で、扱う工程が特定の領域に絞られる分、マーケティング全体を俯瞰する経験は積みにくくなる場合があります。将来、事業会社のマネジメント層や、複数領域を横断する立場を目指すなら、この点は考慮に入れておく必要があります。
「SEOを専門領域として、コンテンツ設計から効果測定まで、複数クライアントの支援をご担当いただきます」(架空の例)
支援会社の求人票では、SEO・広告運用・CROなど、特定の施策名が職種名や業務内容に明記される傾向があります。専門領域の名称がそのまま職種名になっているかどうかは、支援会社かどうかを見分ける手がかりの1つです。
06どの類型を選ぶか、4つの判断軸
3類型のどれを選ぶべきかは、正解が1つに決まるものではありません。次の4つの問いに答えていくことで、自分に合う型が見えやすくなります。
1つ目は、特定の業界・商材を深く知りたいか、複数の業界を横断して経験を積みたいかです。前者に近いなら事業会社、後者に近いなら代理店が候補になります。
2つ目は、施策全体のPDCAを内製で回す経験を積みたいか、特定の工程を専門的に極めたいかです。前者は事業会社、後者は支援会社との相性が良い傾向にあります。
3つ目は、経営の意思決定にどこまで近い距離で関わりたいかです。事業会社では、マーケティング担当が事業計画の議論に加わる機会が比較的生まれやすいとされています。
4つ目は、次のキャリアで何を武器にしたいかです。独立や直取引での案件獲得を見据えるなら、複数クライアントへの提案経験が積める代理店や支援会社の経験が生きやすくなります。選んだ型に応じて、転職活動で見せるべき実績の切り口も変わります。具体的な見せ方は『施策の根拠をどう見せるか、Webマーケター転職のポートフォリオ術』で扱っています。
07求人の量から見る、転職先の選択肢の広さ
Webマーケター向けの求人は、決して少なくありません。自社と提携人材紹介企業の求人を合算した集計では、取扱求人数は9万件です。このうちWebマーケティング関連の求人は5,500件です(出典:WEBMARKS社内実績集計)。
このうち、未経験から応募できるWebマーケティング関連の求人は1,500件です。母数は同じく自社と提携人材紹介企業の合算値で、事業会社・代理店・支援会社の内訳までは区分されていない点に注意してください。
代理店経由で転職を考える場合、代理店リストの選択肢も参考になります。WEBMARKSでは50社以上の代理店リストを保有しています(出典:WEBMARKS社内実績集計)。この数字も自社の集計値であり、業界全体の代理店数を示すものではありません。
WEBMARKSの転職支援を通じて転職に成功した人は、報告があった範囲では全員がWebマーケティングの実務ポジションで内定しています。対象は2024年から2025年に就職・転職の報告があった卒業生です(出典:WEBMARKS社内実績集計)。報告ベースの集計であり、全卒業生を網羅した数字ではありません。
これらの数字は、3類型のどれが多いかという内訳までは示していません。あくまで、未経験からでも検討できる選択肢の幅がある、という事実の裏付けとして参照してください。
08つまずきやすい点
転職活動の中で、繰り返し見られるつまずき方がいくつかあります。1つ目は、求人票の職種名だけで会社の型を判断してしまうことです。「Webマーケター」という同じ職種名でも、事業会社と支援会社では日々の業務がまったく異なります。
2つ目は、代理店経由の経験を「広く浅い」、事業会社の経験を「狭く深い」と単純に決めつけてしまうことです。実際には会社の規模や部門構成によって、同じ型でも経験の中身は大きく変わります。
3つ目は、3類型のどれが「格上」かという序列で選んでしまうことです。この記事で示した違いは優劣ではなく、担当領域や専門性の深め方という性質の違いです。
4つ目は、次のキャリアで何を武器にしたいかを考えずに、目先の待遇だけで転職先を決めてしまうことです。数年後にどんな経験を語りたいかを先に考えると、選ぶべき型が見えやすくなります。
09類型別「向いている人」チェック
3類型それぞれについて、向いている人の傾向をチェック形式で整理します。複数の型に当てはまる場合は、当てはまる項目が多い型を候補にしてください。
事業会社が向いている人
- 1つの商材・サービスを長期的に深く担当したい
- 施策の企画から効果検証まで一貫して関わりたい
- 事業計画や経営の意思決定に近い距離で関わりたい
代理店が向いている人
- 複数の業界・クライアントに触れて経験の幅を広げたい
- 短いサイクルで多くの案件をこなすことに抵抗がない
- 初対面のクライアントと短期間で信頼関係を築くことが得意、または身につけたい
支援会社が向いている人
- 特定の施策領域(SEO・広告運用・CROなど)を専門的に極めたい
- 同じ領域の案件を数多くこなして知見を蓄積したい
- 将来、その専門領域を軸にフリーランスや独立を目指したい
10チェックリスト
- 自分が「経験の広さ」と「専門性の深さ」のどちらを今優先したいか言語化した
- 応募先が事業会社・代理店・支援会社のどれに当たるか、事業内容から確認した
- 応募先で担当する業務範囲を求人票または面接で確認した
- 経営との距離感(意思決定にどこまで関与できるか)を確認した
- 次のキャリアで使いたい経験と、応募先で積める経験が一致しているか確認した
- 求人票の年収レンジの読み方を確認した
- 募集要項の行間から実態を読み取る方法を確認した
11FAQ
事業会社と代理店、未経験からの転職はどちらが向いていますか
一概には言えません。事業会社は1つの商材を深く担当できる一方、募集される職種や人数は代理店より限られる傾向があります。代理店は複数クライアントを扱う経験を積みやすく、未経験可の求人も比較的見つけやすいとされていますが、案件の入れ替わりの速さに慣れる必要があります。
支援会社とは具体的にどんな会社を指しますか
SEOコンサルティング会社、コンテンツ制作会社、CRO(成果改善)を専門にするコンサルティング会社などを指します。代理店が広告運用など複数の施策を横断的に扱うのに対し、支援会社は特定の工程を専門に深掘りする点が違いです。
代理店から事業会社へ、あるいはその逆の転職は一般的ですか
どちらの方向の転職も見られます。代理店で複数業界を経験してから、興味を持った業界の事業会社へ移る人もいれば、事業会社で特定商材を深く経験してから、その知見を代理店や支援会社で横展開する人もいます。
独立を見据えるなら、3類型のうちどれがいいですか
独立後は複数のクライアントを相手にすることが多いため、代理店や支援会社で複数クライアントへの提案経験を積んでおくと、独立後の営業や提案の場面で生きやすいといわれています。ただし、事業会社での経験が独立に向かないという意味ではありません。
給与水準は3類型でどう違いますか
WEBMARKSの集計には、3類型ごとに区分した年収データはありません。求人票の年収レンジをどう読み解くかについては『年収レンジをどう読むか、Webマーケター求人の見極め方』で扱っています。
未経験でも応募できる求人はどのくらいありますか
WEBMARKSが自社と提携人材紹介企業を合算して扱う求人のうち、未経験から応募できるWebマーケティング関連の求人は1,500件です。ただし、この数字に3類型ごとの内訳は含まれていません。