01この記事でできるようになること
フリーランス・副業のWebマーケターが、確定申告のときにどんな支出を経費として整理すればよいかが分かります。経費として扱われることが多い項目の一般的な傾向と、迷いやすい家事按分の考え方を、順番に整理します。
ただし、この記事は特定の支出が経費になるかどうかを断定するものではありません。経費として認められるかどうかは、事業との関連性や個別の事情によって変わります。最終的な判断は、税務署または税理士に確認してください。
税制は毎年見直される可能性があります。本記事は2026年8月7日時点で編集部が確認した一般的な考え方をもとに整理しており、最新の制度内容は国税庁の公式サイトでご確認ください。
02前提(対象読者・必要な準備)
対象になるのは、開業届を出したフリーランスのWebマーケター、または副業で一定の収入があり確定申告を検討している人です。会社員として副業をしている場合も、収入の状況によっては確定申告が必要になります。
開業届の出し方は『個人事業主の開業届、Webマーケターが出すタイミングと書き方』にまとめています。独立してからの手続きが気になる人は、あわせて確認してください。
準備として、1年間の収入と支出が分かる通帳やクレジットカードの明細、領収書やレシートを手元に用意してください。案件ごとの請求書や見積書も、収入を確認するときの手がかりになります。
03手順1|「経費かどうか」を考える基本の視点
経費とは、一般に事業を行ううえで必要になった支出のことを指します。事業所得の必要経費についての考え方は、国税庁が公式サイトで公開しています(出典: 国税庁公式サイト)。
ただし「必要かどうか」の線引きは、支出の種類や状況によって変わります。同じ支出でも、事業との関連性を説明できるかどうかで、経費として扱われるかどうかの判断が分かれることがあります。
編集部では、経費にあたるかどうかを考えるときに、次の3つの問いを確認する運用にしています。あくまで確認の視点を整理したものであり、税務上の正式な判定基準ではありません。
- その支出がなければ、その案件の遂行や案件獲得の活動が成立しなかったか
- クライアントや税務署から尋ねられたときに、業務との関係を具体的に説明できるか
- 生活費と事業用の支出を、客観的な記録で切り分けられるか
この3つの問いは、あくまで編集部が整理した確認の視点です。実際に経費として計上できるかどうかの最終判断は、税務署または税理士に確認してください。
04手順2|通信費・機材など「実務で直接使うもの」を洗い出す
Webマーケターの実務で直接使う支出は、一般に経費として扱われることが多い項目です。代表的なものを整理しました。
| 費目 | 具体例 | 説明のポイント |
|---|---|---|
| 通信費 | インターネット回線、スマートフォンの通信料 | 事業で使用している割合の考え方(家事按分) |
| 消耗品費 | 文具、PC周辺機器、名刺 | 業務での使用頻度・用途を説明できるか |
| ソフトウェア利用料 | SEOツール、生成AIツールの利用料、デザインツール | 業務での具体的な使用場面を示せるか |
| 減価償却費 | 一定額以上のパソコン本体など | 取得価額や耐用年数によって扱いが変わる |
| 外注費 | 一部作業を他者に依頼した場合の支払い | 業務委託契約の内容と支払い記録 |
いずれも、業務との関連性を客観的に説明できることが前提です。同じ通信費でも、プライベート利用と混在している場合は、全額を経費にすることは一般的ではありません。
パソコン本体のように高額な購入は、取得価額によって一括で経費にできるか、複数年に分けて計上するかが変わります。この扱いは制度の細目にあたるため、最新の基準は都度確認することをおすすめします。
05手順3|自宅を仕事場にしている場合の家事按分
自宅を仕事場にしているフリーランスは、家賃や水道光熱費の一部を経費として整理する考え方があります。これを家事按分と呼びます。
家事按分は、事業で使用している割合に応じて金額を分ける考え方です。床面積で分ける方法や、使用時間で分ける方法が一般的に知られていますが、どちらが適切かは部屋の使い方や生活スタイルによって変わります。
家事按分は、確定申告のなかでも判断に迷いやすい項目としてよく挙げられます。按分の根拠を記録していないと、あとから説明を求められたときに困ることがあります。
面積で按分する場合は、仕事専用に使っているスペースの面積と、住居全体の面積を記録しておくと説明しやすくなります。時間で按分する場合は、業務に使っている時間帯や曜日を、日々のメモや稼働記録から示せるようにしておくことをおすすめします。
架空の例として、フリーランスWebマーケターが賃貸マンション(総床面積60平方メートル、家賃12万円)の一室を仕事専用スペースとして使っているケースで計算してみます。仕事専用スペースの面積は8平方メートルとします。
仕事専用スペースの面積8㎡ ÷ 住居全体の床面積60㎡ = 按分割合13.3% 家賃12万円 × 13.3% = 経費として計上できる金額の目安、約15,960円(1ヶ月あたり)
この計算例の按分割合や金額は、あくまで仮の設定に基づく一例です。実際の按分割合は、部屋の使い方や契約内容によって変わります。按分の根拠を残す方法としては、間取り図に仕事専用スペースを図示し、面積の算出方法(実測か、契約書記載の面積か)をメモに添えておく方法が考えられます。
使用時間で按分する場合も考え方は同じです。たとえば1日の稼働時間が8時間、月の総可処分時間を720時間とすると、按分割合はおよそ11.1%になります。どちらの方法を選んでも、算出の根拠を記録として残しておくことが重要です。面積按分と時間按分のどちらを選ぶかは、部屋の使い方が固定的か流動的かで判断する考え方が一般的です。
06手順4|案件獲得・スキルアップに関わる支出を確認する
案件を獲得する活動や、スキルアップのための投資も、一般に経費として扱われることが多い分野です。代表的な例を整理します。
- 打ち合わせのための交通費や会議費(飲食を伴う場合は業務との関連性の記録が重要です)
- セミナー参加費・書籍代・スクールの受講料などの研修費
- ポートフォリオサイトの運営費や名刺作成費などの広告宣伝費
- 契約書やツールにかかる費用(詳しくは『副業Webマーケターが最初に整えるべき環境、契約書とツールの最低限』で扱っています)
研修費は、学んだ内容が実務にどうつながるかを説明できることが前提です。案件と直接関係がない学習まで一律に経費とみなすことは、一般的ではありません。
会議費として飲食代を計上する場合は、誰と何のために会ったのかをメモに残しておくと、あとから振り返りやすくなります。相手先や日時が分からない記録は、経費として説明しづらくなる傾向があります。
07手順5|記録を残し、申告の形に整理する
経費として整理した支出は、日付・金額・目的・関係する案件名をセットで記録しておくと、申告のときに迷いにくくなります。クラウド会計ソフトなど記帳を助けるツールを使う人も増えていますが、どのツールを使うかは各自の判断に委ねます。
請求書の発行と経費の記録は、どちらも収支を正しく把握するための実務です。請求書の書き方は『請求書の書き方とインボイス対応、Webマーケターの実務』にまとめています。
判断に迷う支出が多い場合や、収入の規模が大きくなってきた場合は、早めに税理士へ相談することも選択肢です。この記事は経費項目の整理に絞っており、税理士に依頼するタイミングの判断基準までは扱いません。
08つまずきポイント(失敗例つき)
確定申告に不慣れなフリーランスがつまずきやすい点を整理します。個別の事例ではなく、一般的に起きやすい傾向として紹介します。
- 生活費と事業用の支出を同じ口座・カードで管理し、あとから仕分けに時間がかかる
- 領収書を月ごとに整理せず、年末や申告直前にまとめて処理しようとする
- 家事按分の根拠(面積や時間の割合)を記録しておらず、説明を求められたときに困る
- 事業との関連性が薄い支出まで、経費にできると思い込んで計上してしまう
- クラウド会計ソフトへの入力を後回しにし、領収書の内容や目的を忘れてしまう
こうしたつまずきの多くは、支出が発生したタイミングで記録する習慣があれば防ぎやすくなります。月に一度でも、記録をまとめて見直す時間を作ることをおすすめします。
09完了の確認方法(できたかどうかの判断基準)
次のチェックリストで、経費の整理が申告に使える状態かどうかを確認してください。
- 経費として計上した支出は、すべて事業との関連性を説明できる
- 領収書・明細を月ごとに整理し、支出の目的をメモしている
- 家事按分をした費目は、按分の根拠(面積・時間の割合)を記録している
- 判断に迷う支出をリストアップし、税理士や税務署への質問リストを作った
- 収入と支出の記録が、確定申告書の該当項目に転記できる形に整理されている
一つでも欠けている場合は、申告書を作成する前に見直すことをおすすめします。
10FAQ
自宅の家賃は全額を経費にできますか
全額を経費にすることは一般的ではありません。事業で使用している割合分だけを、家事按分という考え方で計上することが一般的です。具体的な按分割合や算定方法は個別の事情によって異なるため、税務署または税理士に確認してください。
副業の場合も経費を計上できますか
副業の所得区分(事業所得か雑所得かなど)によって扱いが変わる場合があります。会社員として副業をしている人も、経費の考え方自体はフリーランスと共通する部分が多くあります。
スクールの受講料は経費にできますか
学んだ内容が実務にどうつながるかを説明できる場合、研修費などとして計上されることが一般的にはあります。ただし、案件との関連性が薄い学習まで一律に経費とみなすことはできません。
領収書が無い支出はどう記録すればいいですか
出金伝票などで支出の内容を記録する方法が一般的に知られています。詳しい取り扱いは、税務署または税理士に確認してください。
経費を多く計上するほど得になりますか
そうとは限りません。実態以上に経費を計上すると、税務調査で指摘を受けるリスクがあります。事業との関連性を説明できる範囲で、正確に記録することが重要です。
家事按分の割合はどう決めればいいですか
床面積や使用時間をもとに割合を決める方法が一般的に知られていますが、住まいの状況によって適切な考え方は変わります。判断に迷う場合は、税理士に相談することをおすすめします。
経費の判断に迷ったら誰に相談すればいいですか
税務署の相談窓口か、税理士への相談が基本です。単価相場や見積もりに関する実務の全体像は『Webマーケターの単価相場、副業とフリーランスの実額データ』で扱っています。
この記事に書かれている項目は、そのまま自分の申告に使えますか
一般的な傾向として紹介しているものであり、そのまま自分の申告に当てはめられるとは限りません。個別の状況に応じた最終判断は、税務署または税理士に確認してください。