01この記事でできるようになること
単発で受けた案件を、依頼元との継続的な契約に切り替えるとき、何をどの順番で提案すればよいかが分かります。提案するタイミングの見極め方、示すべき情報の組み立て方、断られた場合の受け止め方までを扱います。
先に断っておきます。この記事は、提案すれば継続契約になるという内容ではありません。継続するかどうかを最終的に決めるのは依頼元であり、こちらでコントロールできることではないからです。この記事で扱うのは、継続を検討してもらいやすい提案の作り方までです。
02前提(対象読者・必要な準備)
対象読者は、少なくとも1件の単発案件を納品し終えた、またはまもなく納品を終える副業Webマーケターです。まだ1件も受注していない場合は、先に『Webマーケター副業、初案件を獲得するまでの実務ロードマップ』を確認してください。
準備するものは、納品した業務の内容と、そこから見えた成果や気づきをまとめたメモです。数値で示せる成果があれば理想的ですが、数値化が難しい案件でも、依頼元からの評価や実務を通じて分かった課題を言葉にしておけば材料になります。
案件を獲得したチャネルの違いは『Webマーケター案件獲得、直取引・代理店・エージェントの使い分け』で扱っています。この記事は、どのチャネルで獲得した案件でも、単発から継続への切り替えを検討する場面で使える内容です。
03手順1|単発案件のうちに「次につながる余地」を記録する
継続契約への切り替えを考えるなら、案件が終わってから動き出すのでは遅れてしまいます。案件が進んでいる最中に、次に取り組めそうな課題や、まだ手を付けていない領域をメモしておくことが出発点になります。
依頼された対応範囲の外に、関連する課題が見えることがあります。今回の対応範囲ではないと分かっていても、気づいた時点で簡単に記録しておくと、後で提案の材料として使えます。
このメモは、案件が終わってから作ろうとすると記憶が薄れてしまいます。気づいた直後に一行だけでも書き留めておく習慣が、提案の質を左右します。
04手順2|納品時に成果を「振り返りやすい形」で報告する
単発案件の納品時点での報告の仕方が、継続の話につながるかどうかを左右します。担当した業務内容と、その結果どう変化したかを、依頼元が振り返りやすい形でまとめて伝えてください。
編集部が卒業生インタビュー記事35本を確認したところ、案件獲得の経路や継続・紹介につながった要因に触れていたのは27本でした(全128本のうち)。継続につながった要因として多く見られたのは、返信の速さや進捗を自分から報告する姿勢といったコミュニケーション面でした。単価改定や契約書の更新など、契約条件そのものへの言及は見当たりませんでした(出典: 卒業生インタビュー記事35本の確認、2026年8月時点)。
この結果が示しているのは、継続の入口になりやすいのは交渉のテクニックよりも、日々の報告や対応の積み重ねだという傾向です。提案の技術だけを磨いても、土台になる報告や対応が薄いままでは効果が限られます。
05手順3|継続後の枠組みを具体的に示す
継続を提案する段階では、単発案件のときとは示す情報の種類が変わります。単発案件では業務内容と金額を示せば足りますが、継続の提案では、対応する頻度、報告のタイミング、対応範囲の見直し方まで含めて示す必要があります。
対応範囲を曖昧なまま提案すると、依頼元が検討しづらくなります。月にどれくらいの稼働を想定しているか、途中で内容を見直せるのかといった点まで、具体的な言葉にしておいてください。
金額の示し方は『見積書の項目と金額、Webマーケター案件の立て方』で扱っている考え方が、継続契約の提案にもそのまま応用できます。単発の金額提示と違い、継続契約では月額や期間あたりの金額として示す場面が増えます。
06手順4|契約条件を書面で残す前提を伝える
継続的な業務委託の関係になると、口頭でのやり取りだけでは、後から認識の違いが生じやすくなります。提案の段階から、契約条件を書面で残す前提であることを伝えておくと、依頼元にとっても安心材料になります。
日本では、一定期間以上続く業務委託の関係について、契約条件の明示や解除の予告に関する定めが設けられている場合があります。制度の詳細や自分の契約が対象になるかどうかは、公正取引委員会などの公式情報で確認してください。
契約書で確認すべき条項の見極め方は『Webマーケター業務委託契約書、確認すべき条項の見極め方』で扱っています。継続契約を提案する前に、目を通しておくと準備が進めやすくなります。
提案文の完全サンプル(架空の例)
以下は架空の例です。実在の企業名・個人名ではありません。手順1〜4で整理した要素を1通のメッセージにまとめた例として参考にしてください。
件名:継続的なご相談のご提案 ○○様 お世話になっております。△△です。 このたびは□□の制作を担当させていただき、ありがとうございました。 納品後にいただいたフィードバックを踏まえ、追加でご提案できることがあると感じております。 つきましては、単発の対応ではなく、月◯回程度の定例対応として継続的にお手伝いさせていただくことは可能でしょうか。 対応範囲や頻度、金額の詳細については、あらためてご相談のお時間をいただけますと幸いです。 ご検討のほど、よろしくお願いいたします。
このサンプルは、成果への感謝、追加で貢献できる領域の提示、継続の打診、詳細は次のやり取りに委ねるという4つの要素で構成されています。金額や頻度を最初から細かく書きすぎると、依頼元が検討する前に断りやすくなります。詳細は次のやり取りに譲る書き方も選択肢の1つです。
送る前に、次の要素が入っているかを確認してください。
- 納品した業務への感謝が最初に書かれているか
- 成果や気づきが具体的な一文以上で示されているか
- 「継続」「定例」など、単発ではないことが明確な言葉が入っているか
- 金額や頻度の詳細は次のやり取りに委ねる形になっているか
07手順5|提案し、返答を待つ姿勢を整える
提案を出したら、すぐに結論が出るとは限りません。依頼元の社内で予算や体制の検討が必要な場合、返答までに時間がかかることもあります。急かさず、あらかじめ検討にかかる目安の時期を確認しておくと、双方にとって見通しが立てやすくなります。
断られた場合の受け止め方も、あらかじめ考えておいてください。断られたからといって、その依頼元との関係が終わるわけではありません。単発案件として今後も依頼が続く可能性は残ります。理由を聞けそうであれば、次の機会のために確認しておくのも一つの方法です。
断られた場合の返答例文(架空の例)
○○様 ご検討いただき、ありがとうございました。 今回はご期待に沿えず残念ですが、ご事情をご説明いただきありがとうございます。 また機会がございましたら、単発のご依頼でもお気軽にお声がけください。 引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
この返答例のポイントは、断られたことへの不満を出さず、今後の関係を保つ姿勢を示すことです。理由を聞ける雰囲気であれば、「差し支えなければ、今回見送りになった理由を伺ってもよろしいでしょうか」と一言添えると、次回以降の提案に生かせる情報を得やすくなります。返答を急ぐ必要はなく、まずは相手の判断への感謝を先に伝えることを優先してください。
08つまずきポイント(失敗例つき)
継続契約への切り替え提案で、よくあるつまずきを整理します。
1つ目は、成果の振り返りをせずに、いきなり継続の提案だけを切り出す型です。依頼元が納得できる材料がないまま提案されると、判断のしようがありません。
2つ目は、対応範囲や頻度を曖昧にしたまま、金額だけを先に提示する型です。何にいくら払うのかが分からないまま金額を聞かされると、依頼元は検討しづらくなります。
3つ目は、単発案件のときと同じ進め方のまま、継続後の体制について何も触れない型です。継続は単発の延長ではなく、新しい取り決めが必要になる場面だと捉えてください。
4つ目は、断られた際に落胆や不満を態度に出してしまう型です。今後の単発依頼にも影響しかねません。冷静に受け止め、次の機会につなげる姿勢を保ってください。
09完了の確認方法(できたかどうかの判断基準)
提案が準備できたかどうかは、成果の振り返り、対応範囲、頻度、金額、書面化の前提という5つの要素すべてに、具体的な一文以上の説明があるかで確認できます。
もう一つの確認方法は、提案文を一度、Webマーケティングに詳しくない第三者に読んでもらうことです。何を、どれくらいの頻度で、いくらで頼まれているのかを説明できるか聞いてみてください。説明できない場合は、情報の整理が足りていない箇所がある可能性があります。
参考までに、WEBMARKSの卒業生データでは、案件獲得者の70%以上が2案件以上を獲得しています。対象は2020年から2025年の案件獲得データです(出典: WEBMARKS社内実績集計)。ただしこの数字は同一の依頼元との契約継続に限った集計ではなく、新規を含めた複数案件獲得の実態を示す数字です。
継続契約に切り替わるかどうかは、依頼元の予算や体制にも左右されます。この記事の手順を踏んでも、継続にならない場合があることは、あらかじめ理解しておいてください。
10FAQ
継続契約を提案するタイミングに決まった目安はありますか
決まった目安はありません。納品した成果を依頼元が評価できる状態になっていることが前提です。急ぎすぎず、成果を振り返りやすい形にまとめてから提案してください。
提案が通らなかった場合、単発の依頼も途絶えますか
必ずしもそうとは限りません。継続の提案が通らなかったからといって、単発での依頼関係が終わるわけではありません。冷静な受け止め方が、今後の関係を保つ材料になります。
継続契約の金額は、単発案件の単価をそのまま使えばいいですか
そのまま使えるとは限りません。継続契約では稼働の頻度や対応範囲が変わることが多く、金額の考え方も単発とは異なります。この記事の手順3で扱った、月額や期間あたりで示す考え方を参考にしてください。
継続契約になれば、単発案件より収入は安定しますか
安定しやすい傾向はありますが、保証されるものではありません。依頼元側の事情で契約が終わることもあります。継続契約に一本化せず、他の案件も並行して持っておくことをおすすめします。
継続契約の提案は、何回まで断られてもいいですか
決まった回数はありません。断られた理由が分かる場合は、その内容を次の提案に生かしてください。同じ依頼元に同じ形で提案を繰り返すより、内容を見直すほうが有効です。
書面化を提案すると、依頼元に警戒されませんか
一般的には、条件を明確にする姿勢として受け止められることが多いといえます。ただし伝え方には配慮が必要です。お互いの認識を合わせておきたいという趣旨で伝えると、警戒されにくくなります。