01この記事でできるようになること

Webマーケター案件の見積書に、何を書けばよいかが分かります。時給制・月額固定制・成果報酬制のどれを選ぶか、金額をどう決めるかも、順番に整理します。

見積書は、案件が受注できそうな段階で発注側に提示する書類です。項目が抜けていると、あとから業務範囲や支払条件の認識違いが起きやすくなります。この記事は、見積書を作る手順に絞って解説します。

02前提(対象読者・必要な準備)

対象になるのは、案件が受注できそうな段階にいる人、または受注が決まり見積書を出す必要がある人です。副業・フリーランスいずれも対象になります。

準備として、想定する業務範囲、おおよその稼働時間の見込み、参考にする金額データを手元に用意しておいてください。手順1から順に、見積書として仕上げていきます。

03手順1|見積書に入れる必須項目を揃える

見積書に最低限入れておきたい項目を整理します。

分類記載する内容
発行日・発行者情報見積書を出した日付、氏名または屋号、連絡先
宛先発注者の会社名・担当者名
件名どの案件に対する見積もりかが分かる名称
業務範囲対応する作業内容と、成果物として何を納品するか
金額内訳項目ごとの金額、合計金額、消費税の扱い
支払条件支払期日、分割の有無、振込手数料の負担者
有効期限この金額でいつまで受け付けるか
見積書に入れる必須項目のテンプレート構造 見積書は発行日・発行者情報、宛先、件名、業務範囲、金額内訳、支払条件、有効期限の7項目で構成される。有効期限と消費税の扱いは特に抜けやすい項目として注意喚起する。 見積書の必須項目テンプレート 7項目で構成される(表のセル内容は本文参照) ① 発行日・発行者情報 ② 宛先 ③ 件名 ④ 業務範囲 ⑤ 金額内訳(消費税含む) ⑥ 支払条件 ⑦ 有効期限 赤色の2項目(⑤金額内訳の消費税表記/⑦有効期限)は特に抜けやすい 有効期限が無いと、時間が経ってから当初の金額のまま発注されることがあります 消費税の記載はインボイス制度の登録状況で変わる部分があります(要確認) 7項目が揃っているかを、送付前に見直してください この7項目は最低限の目安であり、案件によって追加してよい項目もあります
見積書に入れる必須項目のテンプレート構造

これらの項目のうち、抜けやすいのが有効期限と消費税の扱いです。有効期限を書かないと、時間が経ってから当初の金額のまま発注されてしまうことがあります。消費税の記載方法は、インボイス制度の登録状況によって変わる部分があります。

取引条件を書面で明示する考え方は、公正取引委員会が公表しています(参考:公正取引委員会公式サイト)。制度の運用状況は変わることがあるため、最新の内容は公式サイトで確認してください。

04手順2|見積書のサンプルで全体像をつかむ(架空の例)

項目の一覧だけでは、実際にどう埋めるかがつかみにくいため、見積書の完成形を見てみます。次に示すのはすべて架空の例です。実在する企業・個人ではありません。

架空の案件として、個人事業主「見積花子」(架空の例)が、架空の発注先「株式会社サンプル商事」から、Instagram運用代行を月額固定制で受注する場面を想定します。

見積書のヘッダー部分(架空の例)

項目記載内容
発行日2026年8月10日
宛先株式会社サンプル商事 マーケティング部 山田様
発行者見積花子(屋号:サンプルマーケティング)
件名Instagram運用代行業務 御見積書
有効期限2026年9月10日まで

金額内訳(架空の例)

項目数量単価金額
Instagram運用代行(投稿作成・投稿・月次分析レポート)1ヶ月80,000円80,000円
初期設定費(アカウント設計・初月のみ)1式30,000円30,000円
追加投稿(月4回超過分・1件あたり)0件3,000円0円
小計110,000円
消費税(10%)11,000円
合計金額121,000円

支払条件は「振込期限は請求書発行日から30日以内、振込手数料は発注者負担」(架空の例)のように、見積書の下部に一文で添えます。

この例のように、項目ごとに数量と単価を分けて書いておくと、どの作業にいくらかかっているかを発注側が確認しやすくなります。合計額だけを提示する見積書より、あとから交渉が入ったときにも説明しやすくなります。

05手順3|金額の組み方を選ぶ

見積書の金額には、大きく3つの組み方があります。

組み方向いている案件注意点
時給制業務量が読みにくい継続的な作業稼働時間の記録と報告が必要
月額固定制毎月おおむね同じ範囲の業務を継続する場合業務範囲を超えた依頼の扱いを決めておく
成果報酬制成果を明確に測定できる業務成果の定義と測定方法を事前にすり合わせる
見積金額の組み方3パターンの比較 時給制・月額固定制・成果報酬制の3パターンを、向いている案件と注意点で比較する。時給制は業務量が読みにくい継続的な作業に、月額固定制は毎月おおむね同じ範囲の業務に、成果報酬制は成果を明確に測定できる業務に向く。 見積金額の組み方3パターン 向いている案件・注意点で比較 時給制 月額固定制 成果報酬制 向いている案件 業務量が読みにくい 継続的な作業 向いている案件 毎月おおむね同じ範囲の 業務を継続する場合 向いている案件 成果を明確に測定 できる業務 注意点 稼働時間の記録と 報告が必要 注意点 範囲超過分の依頼の 扱いを決めておく 注意点 成果の定義と測定方法を 事前にすり合わせる 案件によっては、基本業務は月額固定・追加分は時給のように組み合わせて使えます
見積金額の組み方3パターンの比較、向いている案件・メリット・注意点

案件によっては、複数の組み方を組み合わせることもあります。たとえば、基本業務は月額固定にし、追加の分析レポートだけ時給で計算する形です。

どの組み方を選ぶかは、業務範囲がどれだけ明確に決まっているかで判断します。業務範囲が変動しやすい案件ほど、稼働量に応じて金額が変わる組み方のほうが、双方にとって公平になりやすくなります。

06手順4|時給制・月額固定制・成果報酬制で金額を計算する(計算実演)

組み方を選んだら、実際に数字を当てはめて金額を出します。以下の金額はすべて計算の流れを示すための仮の設定であり、相場そのものを示すものではありません。相場感は『Webマーケターの単価相場、副業とフリーランスの実額データ』で確認してください。

時給制の計算例

時給制では、時給に想定稼働時間をかけて金額を出します。

時給3,000円(仮の設定)× 想定稼働時間20時間 = 60,000円

打ち合わせや報告書の作成にかかる時間も、稼働時間に含めて計算してください。実作業の時間だけを数えると、見積金額が実際の負担より低くなりやすくなります。

月額固定制の計算例

月額固定制では、まず時給換算した金額を出し、稼働時間の変動を吸収するための調整分を加えます。手順2のサンプルは、次の計算で80,000円としています。

時給3,000円(仮の設定)× 想定稼働時間25時間 = 75,000円 変動吸収分として5,000円を加算 = 80,000円(月額固定の見積金額)

稼働時間が月によって多少前後しても、双方が合意した固定額で運用できる点が、月額固定制のメリットです。ただし業務範囲を超える依頼が続く場合は、金額の見直しを申し出てください。

成果報酬制の計算例

成果報酬制では、基本料金に成果1件あたりの単価をかけた金額を足すのが基本の形です。

基本料金30,000円(仮の設定)+ 成果1件あたり2,000円(仮の設定)× 想定成果20件 = 70,000円

成果報酬制で最も重要なのは、「成果」の定義を事前にすり合わせておくことです。問い合わせ件数を成果とするのか、実際の契約件数を成果とするのかで、金額の妥当性も労力もまったく変わります。

07手順5|金額の水準を決める

単価相場の全体像は『Webマーケターの単価相場、副業とフリーランスの実額データ』にまとめています。この記事では、その数字を見積書の金額にどう反映するかを扱います。

WEBMARKSの集計では、副業案件の時給が判明している14件の平均は2,207円です。対象期間は2020年から2025年で、この集計の中には時給5,000円で契約した事例も含まれています(出典: 卒業生データ集計)。

見積り前に確認しておきたい自社データと、使うときの注意点 WEBMARKS受講生・卒業生の実測データとして、平均時給2,207円(時給判明14件、2020〜2025年)、時給5,000円の事例、月収30万円以上が過半数(2023年卒200名、卒業後3か月以上経過)の3点がある。いずれも母数が小さいか対象が限定的で、そのまま見積もりの基準にはできないという注意点を示す。 見積り前に確認したい自社データ そのまま見積金額の基準にはできない参考値 数字 使うときの注意点 平均時給2,207円 n=14件・2020〜2025年 時給が判明している事例だけの平均 母数14件と小さく代表値ではない 時給5,000円の事例 上記14件の一部・2020〜2025年 高水準の一事例であり平均ではない 全員が到達する水準ではない 月収30万円以上が過半数 2023年卒200名・卒業後3か月以上 時給ではなく月収ベースの一時点調査 見積書の時給算定に直接は使えない 3つとも自社データであり、業界全体の相場調査ではありません 社内に業界平均の集計は無く、他社の相場と直接比較できません 見積金額は、自分の稼働時間の試算と業務範囲を加味して個別に決めてください
見積り前に確認しておきたい自社データと、使うときの注意点

この数字は、あくまで時給が判明している14件だけの平均です。母数が小さいため、そのまま自分の見積もりの基準として使うことはおすすめしません。

もう一つ参考になるのが、案件獲得後の収入データです。2023年卒業生で、卒業後3か月以上が経過した200名を対象にした調査があります。この調査では、案件獲得に成功した人の過半数が月収30万円以上に達しています(出典: 卒業後3か月以上経過した受講生200名を対象にした調査)。

これらの数字は、あくまでWEBMARKS受講生・卒業生の実測データです。業界全体の相場調査ではなく、社内に業界平均の集計もありません。他社のスクールや求人媒体が示す相場と、直接比較できるものではない点にご注意ください。

金額を決める実務としては、まず自分の稼働時間の見込みを立て、時給換算でいくらになるかを試算します。そのうえで、業務範囲・必要なスキル・納期の条件を加味して、最終的な金額に調整します。

08手順6|見積書を送るタイミングとやり取りの流れ

見積書は、業務範囲がある程度固まった段階で送るのが基本です。ヒアリングが終わり、依頼内容の輪郭が見えた時点で提示すると、双方の認識のずれを防ぎやすくなります。

見積書を送った後、金額について交渉が入ることもあります。金額を下げる場合は、業務範囲も合わせて調整するなど、金額と業務範囲をセットで交渉することをおすすめします。

案件の途中で追加の依頼が発生した場合は、当初の見積もりとは別に、追加分の見積もりを改めて提示します。追加業務を無償で対応してしまうと、次第に業務範囲が広がり続け、当初の金額と見合わなくなることがあります。

09手順7|見積書を管理・保存する

送付した見積書は、案件ごとに控えを残しておきます。契約書や請求書の金額が、見積書の内容と一致しているかを、案件の節目で確認する習慣をつけると、金額のずれに早く気づけます。

見積もり後の請求書の書き方は、お金と契約デスクの別の記事で詳しく扱います。

10つまずきポイント(失敗例つき)

見積書でよくあるつまずきを整理します。

  • 金額の内訳を書かず合計額だけを提示し、交渉時に説明できなくなる
  • 有効期限を書かず、時間が経ってから当初の金額で発注が来てしまう
  • 業務範囲を曖昧にしたまま提出し、追加作業が無償扱いになってしまう
  • 消費税の扱いを確認せず、後から金額の認識違いが生じる
  • 平均時給などの参考データを、そのまま自分の見積もり金額として使ってしまう

見積もりの金額根拠を明確にしないまま提示すると、契約後に金額の妥当性を説明できず、交渉で不利になりやすくなります。内訳を項目ごとに分けて示しておくことが、根拠を説明しやすくする最低限の備えです。

11完了の確認方法(できたかどうかの判断基準)

次を満たしていれば、見積書として送れる状態です。

  • 発行日・発行者情報・宛先・件名が書かれている
  • 業務範囲と成果物が具体的に書かれている
  • 金額の内訳、支払条件、有効期限が書かれている
  • 消費税の扱いを確認したうえで記載している

一つでも欠けている場合は、送付前に見直してください。

12FAQ

見積書の金額はどう決めればいいですか

時給換算で試算したうえで、業務範囲・必要なスキル・納期の条件を加味して調整します。WEBMARKSの集計データはあくまで参考値であり、そのまま基準にすることはおすすめしません。

見積書に消費税は記載する必要がありますか

記載方法はインボイス制度の登録状況によって変わる部分があります。最新の制度内容は、国税庁の公式サイトで確認してください。

代理店経由の案件でも見積書は自分で作る必要がありますか

直取引の場合は自分で見積書を用意することが多く、代理店経由では代理店指定のフォーマットに従うことが一般的です。チャネルごとの違いは『Webマーケター案件獲得、直取引・代理店・エージェントの使い分け』で扱っています。

見積もりの有効期限はどれくらいに設定すればいいですか

案件の性質によって異なるため、この記事では一律の期間を示しません。金額の前提となる稼働時間や市況が変わりやすい案件ほど、短めの期限を設定する考え方もあります。

見積書を出した後、金額交渉にはどう対応すればいいですか

金額だけを下げるのではなく、業務範囲もあわせて調整することをおすすめします。金額と業務範囲をセットで交渉すると、双方の認識のずれを防ぎやすくなります。

屋号が無くても見積書は発行できますか

発行できます。個人名での発行も可能ですが、屋号があると事業者としての印象を持たれやすくなります。開業届の出し方は『副業Webマーケターが開業届を出すタイミングと書き方』で扱っています。