01この記事でできるようになること

初回商談で確認しておくべき項目のカテゴリと、聞く順番が分かります。限られた商談時間の中で、聞き漏らしを防ぐための時間配分の考え方も扱います。

聞き取った内容をどう提案書に落とし込むかは『提案書の通過率が上がる構成、Webマーケター案件の作り方』で扱っています。この記事は、その前段階であるヒアリングそのものに絞った内容です。

02前提(対象読者・必要な準備)

対象読者は、直取引やエージェント経由の案件で、発注側と初回商談の機会を持つ人です。代理店経由でも、実務者が直接クライアントと話す運用では参考になります。

チャネルごとの初回商談の位置づけは『Webマーケター案件獲得、直取引・代理店・エージェントの使い分け』で扱っています。直取引と代理店の選び方に迷っている場合は『直取引と代理店、Webマーケター案件はどちらを選ぶか』もあわせて確認してください。

商談前の準備として、案件の概要と、発注側の事業内容を公開情報の範囲で把握しておくことをおすすめします。何も調べずに臨むと、基本的な質問に時間を取られ、深く聞くべき点に到達できません。

03手順1|商談前に確認しておく情報を整理する

初回商談で聞くべき項目の全体マップ 初回商談のヒアリングを中心に、現状・課題、予算・契約条件、体制、意思決定、稼働条件の5カテゴリへ分岐する全体マップ。各カテゴリに具体的な確認例を添える。 初回商談で聞くべき項目の全体マップ 5つのカテゴリで聞き漏らしを防ぐ 初回商談のヒアリング 現状・課題 何に困って いるか 予算・契約 総額か工数 ベースか 体制 稼働時間・ 報告頻度 意思決定 誰がいつ 判断するか 稼働条件 在宅か 常駐か 5カテゴリすべてに情報が書き込めているかを確認する 1つでも空欄なら、追加のやり取りで補う
初回商談で聞くべき項目の全体マップ(課題・予算・体制・意思決定・稼働条件)

商談本番で聞くべき項目は、大きく5つのカテゴリに分かれます。現状と課題、予算と契約条件、稼働の体制、意思決定のプロセス、そして稼働条件です。

事前に調べられる範囲、たとえば発注側の事業内容や公開されている実績は、商談前にひととおり目を通しておきます。商談の時間は、調べれば分かることではなく、相手に聞かないと分からないことに使うのが基本です。

04手順2|現状と課題を聞く

現状と課題は、まず相手の言葉でそのまま話してもらうことから始めます。こちらの仮説を先に提示すると、相手が話しにくくなることがあるためです。

「現在、どのような状態で、何に困っていますか」というオープンな質問から入り、具体的な数字や事例が出てきたら、そこを深掘りしていく進め方が有効です。

抽象的な質問から具体的な質問へ、事実から数字へという順番で、次のような質問を使い分けます。

  • 「現在、どのような状態で、何に困っていますか」
  • 「その状態は、いつ頃から続いていますか」
  • 「これまでに、その課題に対して何か対策を試みたことはありますか」
  • 「対策を試みた場合、うまくいかなかった理由は何だとお考えですか」
  • 「この課題を放置すると、事業にどんな影響が出るとお考えですか」

1問目で相手の言葉のまま課題を引き出し、2問目以降で時間軸と過去の打ち手を確認する順番です。過去の対策とその失敗理由まで分かると、同じ提案を繰り返さずに済みます。

05手順3|期待する成果とゴールを聞く

期待する成果は、抽象的な言葉のまま終わらせず、できるだけ具体的な状態に落とし込んで確認します。「成果を出したい」だけでは、施策の方向性を決めきれません。

いつまでに、何がどうなっていれば成功と言えるのか、期間と成功の定義をセットで聞いておくと、後の提案書の構成にそのまま使えます。次のような質問で、期間と定義を具体的な言葉に落とし込みます。

  • 「今回の取り組みで、いつまでに何を達成したいとお考えですか」
  • 「成功したかどうかは、どんな数字や状態で判断されますか」
  • 「社内で今回の成果を報告される相手は、どなたになりますか」

期間と成功の定義を数字で引き出せるかどうかで、提案書に書く目標設定の精度が変わります。社内報告の相手が分かると、提案書に入れるべき説明の粒度も見えてきます。

06手順4|予算感と契約条件を聞く

予算感は、聞きにくいと感じる人が多い項目ですが、確認しないまま提案を進めると、金額が的外れになりやすくなります。総額で考えているのか、工数ベースで考えているのかを確認するだけでも、提案の組み立てが変わります。

契約形態や支払いサイトなどの条件も、この段階で軽く触れておくと後がスムーズです。税務上の扱いや契約の細部は案件ごとに異なるため、断定的な説明は避け、疑問点は専門家や発注側に個別に確認する前提で進めてください。

予算感は、答えやすい質問から先に聞き、緊張がほぐれてから金額に触れる順番が有効です。

  • 「今回のご予算は、総額でお考えですか、それとも工数ベースでお考えですか」
  • 「概算でも構いませんので、想定されている金額のレンジを伺えますか」
  • 「契約期間は、まず何ヶ月程度からのスタートをお考えですか」
  • 「お支払いのサイト(月末締め翌月末払いなど)は決まっていますか」

総額思考か工数思考かで、提案書での金額の見せ方が変わります。金額レンジをすぐに答えてもらえない場合は、契約期間や支払いサイトなど答えやすい質問を先に聞き、あらためて予算の話に戻る進め方も有効です。

07手順5|稼働条件と体制を聞く

稼働条件では、稼働できる時間帯、報告の頻度、使用するツール、稼働場所(在宅か常駐か)を確認します。ここが曖昧なまま契約すると、後から認識違いが表面化しやすくなります。

エージェント経由や直取引の案件には、在宅で完結するものが少なくありません。WEBMARKSの卒業生データでは、案件獲得者の8割が在宅ワーク対応の案件を得ています。

対象は2020年から2025年の卒業生データです。フルリモートまたはリモート可に該当する割合は81.5%で、該当件数は31/38件です(出典: WEBMARKS社内実績集計)。稼働場所は案件によって幅があるため、初回商談で明確にしておくべき項目の1つです。

稼働条件と体制については、次のような質問で具体的な運用イメージをすり合わせます。

  • 「稼働できる時間帯や曜日に、決まりはありますか」
  • 「進捗の報告は、どのくらいの頻度を想定されていますか」
  • 「連絡手段は、チャットとメールのどちらを優先されますか」
  • 「業務は在宅で完結する想定ですか、それとも常駐が必要になりますか」
  • 「使用するツールやアカウントの権限は、どちらが用意しますか」

報告頻度と連絡手段が分かると、契約後の運用イメージをすり合わせやすくなります。在宅か常駐かは、提案できる金額や稼働可能な曜日にも直結する質問です。

08手順6|意思決定のプロセスを聞く

商談の相手が最終的な決裁者とは限りません。提案を誰がどのように判断するのか、決裁までにどれくらいの期間がかかるのかを聞いておくと、その後の進行を見通しやすくなります。

意思決定のプロセスは、次のような質問で確認します。

  • 「今回のご相談は、どなたが最終的にご判断される想定でしょうか」
  • 「決裁までに、どのくらいの期間を見込んでいらっしゃいますか」
  • 「決裁の際、他社の提案と比較される予定はありますか」

決裁者と商談の相手が違う場合、提案書には決裁者向けの要約を別途用意する必要があります。比較検討の有無が分かれば、価格の説明に重点を置くか、実行力の説明に重点を置くかを調整できます。この5つの質問カテゴリ(現状と課題・成果とゴール・予算と契約条件・稼働条件と体制・意思決定)を順番に埋めていくと、聞き漏らしを防ぎやすくなります。

商談時間内でのヒアリングの時間配分 45分の商談を想定し、アイスブレイク5分、現状確認10分、課題深掘り15分、予算・条件確認10分、次のステップ確認5分という時間配分の例を、幅の異なる横棒で示した時間軸の図。 商談時間内でのヒアリングの時間配分 45分の商談を想定した時間配分の例 アイスブレイク 5分 現状確認 10分 課題深掘り 15分 予算・条件確認 10分 次の一歩 5分 課題の深掘りに最も多くの時間を割く 時間が足りない項目は、次回やメールで補う
商談時間内でのヒアリングの時間配分

30分から60分程度の商談を想定する場合、自己紹介と現状確認に序盤の時間を使います。課題の深掘りに最も多くの時間を割き、終盤で予算・条件と次のステップを確認する配分が基本です。時間が足りない場合は、次回の商談やメールでのやり取りに回す判断も必要になります。

WEBMARKSでは、応募前の提案練習の場を設けています。ヒアリングでの受け答えを事前に練習しておくと、本番での聞き漏らしを減らしやすくなります。

聞くべき項目の優先度分類 初回商談で聞くべき項目を、時間が無くても必ず聞く必須項目4つと、余裕があれば聞く状況次第の項目4つに分類した図。 聞くべき項目の優先度分類 時間が足りないときは、必須項目を優先する 必須項目 状況次第の項目 現状と課題 予算感(総額か工数か) 稼働条件(時間・報告・場所) 意思決定のプロセス 使用するツールの指定 契約書のひな形の有無 過去の発注実績 社内の稟議フロー 必須項目は初回商談で、状況次第の項目は後日でも確認できます
聞くべき項目の優先度分類(必須項目と状況次第の項目)

時間が足りない商談では、すべての項目を均等に聞こうとせず、優先度をつけて臨んでください。現状と課題、予算感、稼働条件、意思決定のプロセスは、初回商談で優先して確認しておきたい項目です。使用ツールの指定や契約書のひな形の有無などは、後日のやり取りで補っても問題ありません。

09つまずきポイント(失敗例つき)

初回商談でよくあるつまずきを整理します。

1つ目は、予算を聞きそびれ、後で提案する金額が的外れになる型です。相手の想定と大きくズレた金額を出すと、以降の交渉がやり直しになります。

2つ目は、意思決定者と話さないまま進め、決裁の段階で提案が覆る型です。商談の相手が誰の代理で話しているのかを、早い段階で確認しておく必要があります。

3つ目は、稼働条件を確認せず、契約後に稼働時間や報告頻度の食い違いが発生する型です。条件面は聞きにくいと感じても、契約前に確認しておいてください。

4つ目は、一方的に質問を重ね、相手の話を遮ってしまう型です。ヒアリングは質問リストの消化ではなく、対話の中で情報を引き出す作業です。

5つ目は、メモを取らず、記憶に頼って提案書を作成し、情報が抜け落ちる型です。商談中のメモか、許可を得たうえでの録音か、記録の手段をあらかじめ用意してください。

6つ目は、聞いた内容を商談の最後に確認せずに終える型です。認識違いのまま提案書を作ると、提出後にやり直しが発生します。

10完了の確認方法(できたかどうかの判断基準)

ヒアリングが十分だったかどうかは、現状と課題、予算と契約条件、体制、意思決定、稼働条件の5カテゴリすべてに、具体的な情報を書き込めているかで確認できます。

5カテゴリのうちどれか1つでも空欄が残っている場合は、追加で確認する機会を作ってください。メールや次回の商談で補うことは、決して珍しいことではありません。

もう一つの確認方法は、商談の最後に聞いた内容を要約し、相手に間違いがないか確認することです。この一手間が、提案書を作った後の認識違いを大きく減らします。

11FAQ

初回商談は何分くらいを想定すればいいですか

案件によりますが、30分から60分程度を想定することが多いです。時間が短い場合は、優先度の高い項目から順に聞き、残りは後日のやり取りで補う判断が必要です。

予算を聞くのは失礼にあたりませんか

聞き方に配慮すれば失礼にはあたりません。「総額でお考えですか、それとも工数ベースでお考えですか」のように、選択肢を示す聞き方だと、相手も答えやすくなります。

商談相手が意思決定者かどうか分からない場合はどうすればいいですか

「今回のご相談は、どなたが最終的にご判断される想定でしょうか」と直接聞いて問題ありません。曖昧にしたまま進めるより、早い段階で確認したほうが、後の手戻りを防げます。

ヒアリングした内容は、どこまで提案書に反映すればいいですか

聞いた内容のすべてを反映する必要はありません。特に重要な課題と、期待する成果に関わる部分を中心に、提案書の構成に落とし込んでください。詳しい落とし込み方は『提案書の通過率が上がる構成、Webマーケター案件の作り方』で扱っています。

オンライン商談とオフライン商談で、聞き方は変えるべきですか

大きくは変わりません。ただしオンラインの場合、相槌や反応が伝わりにくいため、意識的に相槌を入れたり、要点を言葉にして確認したりすると、対話がスムーズになります。

商談中にメモを取ると、相手に警戒されませんか

多くの場合、警戒されることはありません。むしろ、真剣に話を聞いている印象につながります。録音する場合は、事前に一言断りを入れてください。