01この記事でできるようになること

実績が1つも無い状態から、最初の案件を受注するまでの手順が分かります。何を「実績」として提示できるか、自主制作をどう扱うか、最初の案件でどこまで受けてよいかを、順番に整理します。

副業として初案件を目指す場合の全体像は『Webマーケター副業、初案件を獲得するまでの実務ロードマップ』で扱っています。あの記事は時間の作り方から納品後の動きまでの5段階全体を扱う記事です。この記事は、その中でも「実績をどう示すか」という一点だけを、どの進路・どのチャネルにも共通する形で掘り下げます。

案件を獲得するチャネルそのものの比較は『Webマーケター案件獲得、直取引・代理店・エージェントの使い分け』で扱っています。あわせて確認すると、実力の段階に応じた動き方がつかみやすくなります。

02前提(対象読者・必要な準備)

対象になるのは、Webマーケティングの学習を一通り終えたものの、報酬が発生する実務の経験がまだ無い人です。副業として始める場合も、転職やフリーランスとして案件を探す場合も、この記事の考え方は共通して使えます。

準備として、これまでの学習内容・自主制作の経験・前職や本業で関連しそうな業務を、思いつく限り書き出しておいてください。手順1で、その中から何が「実績」として使えるかを一緒に整理します。

03手順1|何が「実績」として認められるかを整理する

発注側が見ているのは、経歴の長さよりも「この人に任せて大丈夫か」を判断できる材料です。実績として使える情報は、大きく3種類に分けられます。

  • クライアントワークの実績: 報酬の有無にかかわらず、他者から依頼を受けて行った実務
  • 自主制作の実績: 自分のブログやSNS、想定案件への施策など、自分の判断で行った実務
  • 関連経験の転用: 前職や本業で行った、分析・文章作成・数値管理などの周辺スキル
「実績」として使える情報の判定フロー 行った活動を、報酬が発生する依頼だったか、自分の判断で始めたかで分岐させると、クライアントワークの実績・自主制作の実績・関連経験の転用の3種類に分かれる。実績ゼロの段階では自主制作と関連経験の転用をどう見せるかが鍵になるという整理。 「実績」として使える情報の判定フロー 報酬の有無と着手主体で3種類に分かれる 行った活動 報酬が発生する依頼だったか YES クライアントワークの実績 最も説得力が高い NO 自分の判断で始めたか YES 自主制作の実績 正直な明記が必須(手順2) NO 関連経験の転用 翻訳して伝える(手順3) 実績ゼロの段階は「自主制作」と「関連経験の転用」の見せ方が鍵になる 3種類は排他的ではなく、複数を組み合わせて提示してよい
「実績」として使える情報の判定フロー、報酬の有無と着手主体で3種類に分岐

3種類のうち、最も説得力があるのはクライアントワークの実績です。ただし、実績ゼロの段階ではクライアントワークがまだ無いことが前提のため、残り2種類をどう見せるかが最初の分かれ目になります。

自主制作は「本当にクライアントの案件だったのか」を疑われやすい弱点があります。関連経験の転用は「Webマーケティングの実務そのものではない」という弱点があります。どちらも単独では弱いため、手順2・手順3でそれぞれの弱点を補う見せ方を扱います。

04手順2|自主制作を実績として提示するときのルール

自主制作を実績として出すときに、最も避けたいのは「クライアントの案件だったかのように」書くことです。実際には依頼を受けていないのに受けたように見せる書き方は、信頼を損なう行為であり、この記事ではすすめません。

自主制作は、自主制作だと正直に明記したうえで、取り組んだ過程を具体的に示すことで説得力を持たせます。何を目的に、どんな仮説を立て、どんな施策を行い、どんな結果になったかを、数値とあわせて書きます。

自主制作の見せ方、避けたい書き方と説得力のある書き方の比較 自主制作を実績として出すとき、クライアントの案件だったかのように書く・結果を曖昧にするのは避けたい書き方。自主制作だと正直に明記し、目的・仮説・施策・結果を数値つきで具体的に書くほうが説得力を持たせられるという比較。 自主制作の見せ方の比較 避けたい書き方と説得力のある書き方 避けたい書き方 説得力のある書き方 クライアントの案件だったかのように書く (実態と異なる書き方) 自主制作だと正直に明記する (実態のまま示す) 「SEOを試した」で終える (過程が分からない) 目的・仮説・施策・結果を数値で書く (過程の解像度が伝わる) 結果が悪かった部分を書かない (都合よく見せようとする) うまくいかなかった点も含めて書く (検証の姿勢が評価される) 自主制作はクライアントワークの代わりではなく、実務の考え方を示す補助材料です
自主制作の見せ方、避けたい書き方と説得力のある書き方の比較

たとえば「自分のブログでSEOを試した」だけでは弱く、「特定のキーワードで記事を作成し、3か月で検索順位がどう変化したかを計測した」まで書くと、取り組みの解像度が伝わります。結果が思わしくなかった場合も、隠さず書いたほうが、検証の姿勢そのものが評価されることがあります。

自主制作は、クライアントワークの代わりにはなりません。あくまで「実務の考え方を持っている」ことを示す補助材料として使ってください。

自主制作のテーマは、実務に近い形で設計するほど説得力が増します。具体的なテーマの例を挙げます。

  • 自分のブログやSNSアカウントを立ち上げ、特定のキーワードで検索順位の変化を計測する
  • 架空の店舗・サービスを想定し、LPを1本制作して構成の意図を言語化する
  • 知人や家族が営む店舗・個人事業の情報発信を、無償の範囲で許可を得て手伝う
  • 公開されている統計データを使い、架空の商材で広告文の複数パターンを作成し、選定理由を書き残す
  • 生成AIツールを使った制作物について、どんな指示でどう改善したかの過程を記録する

いずれのテーマも、成果の良し悪しより、目的・仮説・実行・結果という一連の流れを言語化できるかどうかが重要です。テーマを選ぶときは、応募したい案件の業種や業務内容に近いものを選ぶと、提案文で使うときに説得力が増します。

05手順3|前職・本業の経験を「翻訳」して伝える

Webマーケティングの実務経験が無くても、前職や本業の中に転用できる経験がある人は少なくありません。数値をもとに判断した経験、文章で人に説明した経験、複数の関係者と調整した経験などが、実務に近い形で使えます。

大切なのは、前職の業務をそのまま書くのではなく、Webマーケティングの実務に置き換えて説明することです。たとえば「店舗の売上データを毎週集計していた」という経験は、「データをもとに施策の効果を検証する姿勢がある」という形に翻訳できます。

この翻訳は、転職の場面でも同じ考え方が使えます。より詳しい翻訳の手順は『施策の根拠をどう見せるか、Webマーケター転職のポートフォリオ術』で扱っています。

06手順4|最初の案件の規模を絞り込む、無理をしない線引き

実績ゼロの段階で起きやすい失敗の一つが、最初の案件を大きく受けすぎることです。実績を作りたい焦りから、本来の実力を超えた範囲の業務まで引き受けてしまうと、納品の質が落ち、かえって次の案件につながりにくくなります。

最初の案件で受けてよい範囲と避けたい範囲の線引き 期間・金額・保証範囲の3軸で、最初の案件で受けてよい範囲と避けたい範囲を対比する。期間は数週間以内、金額は少額でも金銭のやり取りを発生させる、保証範囲は作業範囲のみを約束するのが受けてよい範囲。終わりが見えない継続前提、完全無償の継続、成果の確約は避けたい範囲という整理。 最初の案件のスコープの線引き 期間・金額・保証範囲の3軸で整理 受けてよい範囲 避けたい範囲 期間 数週間以内で区切れる範囲 終わりが見えない継続前提の丸投げ 金額 少額でも金銭のやり取りが発生する 完全無償の依頼を際限なく続ける 保証範囲 行う作業の範囲だけを約束する 成果を確約する表現を使う 実績を作りたい焦りから範囲を広げすぎると、納品の質が落ちやすくなります 3軸すべてを厳守するものではなく、判断の目安として使ってください
最初の案件で受けてよい範囲と避けたい範囲の線引き、期間・金額・保証範囲の3軸

最初の案件では、次の3つを目安に規模を絞り込むことをおすすめします。

  • 期間: 数週間以内で完了できる範囲に区切る
  • 金額: 無償ではなく、少額でも金銭のやり取りを発生させる
  • 保証範囲: 成果を確約する表現は使わず、行う作業の範囲だけを約束する

無償で引き受けること自体を否定するものではありませんが、無償の依頼を際限なく続けると、次の案件を探す時間や気力が失われやすくなります。少額でも金銭のやり取りが発生する形にしておくと、双方が「業務」として扱う意識を持ちやすくなります。

具体的な金額の目安は『Webマーケターの単価相場、副業とフリーランスの実額データ』にまとめています。最初の案件は、単価の高さより「実務経験を積めるか」を優先して選ぶ判断もあり得ます。

07手順5|提案文・応募文に実績ゼロを補う情報を入れる

実績ゼロの状態で提案文を書くときは、実績が無いことを隠すのではなく、代わりに何を示せるかを明確にすることが大切です。次の3点を簡潔に書くことを意識してください。

  • 自主制作の内容と、取り組んだ過程
  • 関連経験の翻訳(前職・本業での経験をどう活かせるか)
  • 想定する進め方(依頼された業務に、どんな順番で着手するか)

架空の例として、クラウドソーシングでInstagram運用代行の案件に応募する提案文を示します。実在するやり取りではありません。

はじめまして、Webマーケティングを学習しているサンプル太郎と申します。今回の「Instagram運用代行」の募集を拝見し、ご応募いたします。 現在、実務としての受注経験はまだありませんが、この半年間、自分のInstagramアカウントで投稿運用を続け、フォロワー数と保存数の推移を毎週記録してきました。投稿時間帯を変えたときの反応の違いを比較し、平日夜と休日午前で保存率に差が出ることを確認しています。 前職では飲食店の店長として、来客数や客単価のデータを毎週集計し、翌週の仕入れや人員配置に反映する業務を担当していました。数値を根拠に次の行動を判断する進め方は、SNS運用の効果測定にも活かせると考えています。 ご依頼いただいた場合は、まず直近3ヶ月の投稿内容とエンゲージメント率を洗い出し、反応の良かった投稿の傾向を整理したうえで、初月の投稿計画をご提案する進め方を想定しています。稼働時間や報告頻度は、ご相談のうえで調整いたします。 ご検討のほど、よろしくお願いいたします。

この提案文は、自主制作の内容(1〜2段落目)、関連経験の翻訳(3段落目)、想定する進め方(4段落目)という3点を、この順番で並べています。実績が無いことへの言及を最小限にとどめ、代わりに示せる情報を先に置く構成です。

提案文を長く書くより、この3点を簡潔に示すほうが、発注側には伝わりやすくなります。抽象的な自己PRの言葉より、具体的な取り組みや進め方を示す提案文のほうが、実績が少ない段階でも比較検討の対象に残りやすくなります。

WEBMARKSでは、カリキュラム内で規定の成績を収めた受講生に対し、自社または提携先から実務発注を行う「実務経験コミット制度」を設けています。成果や収入を保証する制度ではありませんが、卒業前に実務に近い経験を積む選択肢の一つになっています(出典: WEBMARKS社内制度)。

08つまずきポイント(失敗例つき)

実績ゼロの段階でよくあるつまずきを整理します。編集部が公開されている卒業生インタビュー35本(全128本のうち)を読んだところ、実績ゼロから1件目を獲得した経緯に触れていたのは15本でした。

  • 自主制作をクライアントワークであるかのように書き、後から実態を聞かれて説明に詰まる
  • 実績を作りたい焦りから、最初の案件で本来の実力を超えた範囲まで引き受けてしまう
  • 無償の依頼を際限なく引き受け続け、次の案件を探す時間が取れなくなる
  • 前職の経験を翻訳せず、そのまま職歴として並べてしまい、実務との関連が伝わらない
  • 提案文に実績が無いことへの言い訳を書き、代わりに示せる情報を書けていない

特に多いのは、最初の案件で無理な範囲まで引き受けてしまうケースです。実績を早く作りたい気持ちは自然ですが、質を落として納品すると、かえって次の提案がしづらくなります。

09完了の確認方法(できたかどうかの判断基準)

次の状態になっていれば、実績ゼロを乗り越える準備が整ったと判断できます。

  • 自主制作か関連経験かを、正直に区別して説明できる
  • 最初の案件で引き受ける範囲(期間・金額・保証しない範囲)を自分の中で決められている
  • 提案文に、具体的な取り組みと想定する進め方を書けている

3つとも整っていなくても、動き出すこと自体は可能です。実際に提案や応募を重ねながら、足りない部分を補っていく進め方でも構いません。

10FAQ

自主制作は実績として使えますか

使えます。ただし、クライアントの案件だったかのように書くことは避けてください。自主制作だと正直に明記したうえで、取り組んだ過程と結果を具体的に示すことで、説得力を持たせられます。

前職がWebマーケティングと関係ない仕事でも実績になりますか

直接の実務経験ではなくても、数値をもとに判断した経験や、文章で人に説明した経験などは、Webマーケティングの実務に近い形に翻訳して伝えられます。前職の業務内容をそのまま書くのではなく、翻訳して伝える工夫が必要です。

最初の案件は無償でも受けるべきですか

無償を否定するものではありませんが、際限なく続けることはおすすめしません。少額でも金銭のやり取りを発生させ、期間と保証しない範囲を決めたうえで引き受けることをおすすめします。

実績ゼロから案件を取るまで、平均でどれくらいかかりますか

在職しながらか専念できる時間があるかで差が大きく、この記事では特定の期間を平均値として示しません。実績として使える材料を整理し、規模を絞った提案を重ねることで、遠回りを減らせます。

どのチャネル(直取引・代理店・エージェント)から始めるべきですか

実績ゼロの段階では、代理店経由やエージェント経由から始めるほうが現実的です。チャネルごとの詳しい違いは『Webマーケター案件獲得、直取引・代理店・エージェントの使い分け』で扱っています。

実績が無いことを提案文でどう説明すればよいですか

実績が無いことを言い訳のように書くより、代わりに示せる情報(自主制作の内容・関連経験の翻訳・想定する進め方)を具体的に書くほうが、発注側には伝わりやすくなります。