01結論(判断の軸)
単発案件と継続案件、どちらから始めるかに優劣はありません。判断の軸は、実績の有無・使える時間の見通し・契約ルールの違いの3つです。
実績がまだ少ない段階では、単発案件を複数こなして実績を作る動き方が現実的です。逆に、安定した時間を確保でき、特定のクライアントと長く付き合いたい場合は、早い段階から継続案件を意識する道もあります。
この記事では、両者の違いを比較したうえで、状況別にどちらから始めやすいかを整理します。副業全体のロードマップは『Webマーケター副業、初案件を獲得するまでの実務ロードマップ』で扱っています。
02比較対象の整理(表)
単発案件と継続案件には、収入の安定性や契約の扱いなどにいくつかの違いがあります。まずは主な軸で整理しました。
| 比較軸 | 単発案件 | 継続案件 |
|---|---|---|
| 初回受注のしやすさ | 実績が少なくても挑戦しやすい | 信頼関係が前提になりやすい |
| 収入の安定性 | 案件ごとに波が出やすい | 毎月の見込みが立てやすい |
| 実績の見せ方 | 案件数を積み上げて示せる | 継続の実績そのものが評価材料になる |
| 契約解除・更新のルール | 都度契約で完結する | 一定期間以上は解除・更新に関するルールが関わる場合がある |
| 単価交渉の機会 | 案件ごとに都度の見積り | 更新のタイミングで交渉しやすい |
どちらが優れているという話ではなく、今の自分の状況にどちらが合うかという判断です。次の項目で、具体的な判断基準を見ていきます。
03判断基準①実績の有無で選ぶ
これまでの実務経験や成果物がほとんど無い場合は、単発案件から始める方が動き出しやすい傾向にあります。小さな案件を複数こなすことで、提案の材料になる実績を短期間で作れるためです。
WEBMARKSの集計では、案件獲得者の70%以上が2案件以上を獲得しています。対象期間は2020年から2025年です(出典: 案件獲得データの集計)。複数の案件を経験している人が多数派であることは、実績ゼロの段階で単発案件を複数経験する動き方が珍しくないことを示しています。
一方、すでに一定の実務経験や成果物がある場合は、最初から継続案件を狙う選択肢も現実的になります。実績があれば、初回の提案時点でも継続を前提にした信頼を得やすくなるためです。
04判断基準②使える時間の見通しで選ぶ
本業の繁忙期が読みにくい、あるいは月によって使える時間が大きく変わる場合は、単発案件の方が調整しやすい形態です。都度受けるかどうかを判断できるため、忙しい月は案件数を絞れます。
逆に、毎月安定して一定の時間を確保できる見通しがあるなら、継続案件を軸にする方が収入の予測が立てやすくなります。ただし、継続案件は一度引き受けると、対応する時間を継続的に確保する必要がある点に注意してください。
本業と両立しながら時間を作る具体的な方法は、副業を始める段階を扱った別の記事で詳しく整理しています。時間の見通しを立てる前に、まずそちらを確認しておくと判断しやすくなります。
05判断基準③契約のルールの違いを理解して選ぶ
単発案件は、案件ごとに完結する都度契約が基本です。納品して報酬を受け取れば、その時点で契約関係は終わります。
継続案件は、単発とは異なるルールが関わる場合があります。フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律、令和6年11月1日施行)は、業務委託の期間にかかわらず適用されます。発注事業者には、取引条件を書面等で明示する義務と、報酬を給付受領日から原則60日以内に支払う義務が課されています(出典: 厚生労働省・e-Gov法令検索)。この2つの義務は、単発・継続を問わずすべての業務委託が対象です。
これに加えて、一定期間以上続く「継続的業務委託」には、育児介護等への配慮やハラスメント対策の体制整備、契約の解除・不更新を行う際の事前予告といった追加の義務が発注事業者に生じます。この「一定期間」の日数・月数は政令で個別に定められています。複数の実務解説記事では、契約の解除・不更新の事前予告義務(法第16条)は契約期間6か月以上の継続的業務委託が対象とされています。正確な適用条件は、厚生労働省または公正取引委員会の公式情報でご確認ください。
こうしたルールがあること自体は、継続案件を避ける理由にはなりません。むしろ、単発にはない一定の保護があるという見方もできます。契約を結ぶ前に、更新や解除に関する条項がどう書かれているかを確認しておくと安心です。
06判断基準④単価交渉の機会で選ぶ
単発案件は、案件ごとに都度見積りを提示する形が一般的です。見積書の項目と金額の立て方は『見積書の項目と金額、Webマーケター案件の立て方』で扱っています。
継続案件は、契約更新のタイミングで単価交渉の機会が生まれやすいという特徴があります。最初の単価から値上げ交渉するタイミングは、別の記事で扱います。
はじめの案件単価の相場感は『Webマーケター副業、はじめの案件単価はどれくらいが相場か』で確認できます。単発・継続いずれの場合も、最初の単価をどう設定するかが、その後の交渉のしやすさに影響します。
07ケース別のおすすめ
これまでの判断基準を踏まえ、状況別の考え方を整理します。
- 実績がほとんど無い場合は、単発案件を複数経験し、実績と提案の型を作ることをおすすめします。
- 本業の繁忙期が読みにくい場合は、単発案件を中心に、無理のない範囲で受ける方が安全です。
- 安定した時間を確保でき、特定のクライアントと長く付き合いたい場合は、早い段階から継続案件を意識してください。
- すでに評価の高いクライアントがいる場合は、そのクライアントに継続契約を打診する選択肢を検討してください。
- どちらか一方に絞る必要はありません。単発で複数の実績を作りながら、良い関係が築けたクライアントとは継続化を目指す、という併用も一般的な進め方です。
継続契約を打診するときの切り出し方の例を示します(架空の例)。
【継続打診の切り出し例・架空の例】いつも丁寧なご対応をありがとうございます。今回の案件を通じて、貴社の◯◯(業務領域)への理解が深まりました。もしよろしければ、単発の案件としてではなく、月◯件程度の継続的な形でお手伝いできる余地がないか、一度ご相談させていただけますでしょうか。
この例では、これまでの対応への感謝を伝えたうえで、継続を前提にした相談であることを明確にしています。金額や条件の細部を最初から詰めすぎず、まずは相談の機会をもらうことを目的にした文面です。断られた場合に備え、単発の依頼としても関係を続けられる伝え方を心がけてください。
副業を始めたばかりの人が最初の3か月で優先すべきことの順番は、別の記事でも扱っています。
08FAQ
単発案件と継続案件、どちらから始めるべきですか
一律の答えはありません。実績の有無、使える時間の見通し、契約ルールの違いという3つの軸から、自分の状況に合う方を選んでください。
実績が全く無い状態でも継続案件は取れますか
取れないわけではありませんが、初回から継続を前提とした信頼を得るのは難しい場合が多いです。まずは単発案件で実績を作ってから継続化を目指す進め方が現実的です。
継続案件は途中でやめにくいですか
継続的な業務委託には、単発とは異なるルールが関わる場合があります。契約を結ぶ前に、更新や解除に関する条項を確認しておくことをおすすめします。
単発案件だけを続けていても収入は伸びますか
案件数を増やすことで収入は伸ばせますが、都度の受注活動が必要になるため、収入が波打ちやすい傾向があります。月10万円から30万円へ伸ばす道筋は、単価・案件数・継続契約化という複数のレバーの組み合わせで考えることをおすすめします。
単発案件から継続案件へ切り替えるタイミングはいつですか
明確な基準はありませんが、納品の質とやり取りの丁寧さで信頼を積んだ後に打診する流れが一般的です。値上げ交渉と同様、切り出すタイミングは契約更新の前後など、相手が検討しやすい時期を選ぶことをおすすめします。
両方を同時に受けても大丈夫ですか
対応できる時間の範囲内であれば、単発と継続を並行して受けることは珍しくありません。複数クライアントを並行管理する方法は『副業Webマーケター、複数クライアントを並行管理する方法』で扱っています。
継続案件の方が単価は高くなりやすいですか
一概には言えません。継続案件は契約更新のタイミングで交渉の機会が生まれやすい一方、単発案件でも案件ごとに単価を見直すことは可能です。